しつこいようだが,あなたは何千万円の不動産の取引と自分の命とどちらが大切だろうか?残念ながらどちらもあまり大切に思っていない人が多いが,どちらも同じくらい大切だと思う奇特な方は,以下の提案に御賛同いただけるだろう.
家を建てる際に,ハウスインスペクターという制度がある.いわゆる欠陥住宅を防ぐために,建築の専門知識を持った第三者に工事の検査をしてもらうのである。私の言いたいことはもうおわかりになるだろう.そう,医療の現場でも医療インスペクターが必要だ.
欠陥医療は欠陥住宅よりも恐ろしい.そんなことは誰でもわかっているはずなのに,ハウスインスペクターがいて医療インスペクターがいないというのは一体どういうわけだ.人は病気になると余程の命知らずになるのだろうか.
医療インスペクターは,直接命にかかわる問題だけを扱うのではない.医療に関するトラブルというと,泣き寝入りか裁判の両極端を思い浮かべるが,もっと日常的なレベルでの,診療行為に対する疑問,不安の数の方がはるかに多い.専門知識を持った第三者の意見や判断があれば,裁判になるようなトラブルを未然に防げるケースも多いはずだ.少しばかり例をあげても
今飲んでいる薬の副作用が心配
やたらと検査をして金をたくさん取られるが,本当に必要な検査なのだろうか
こっちでは手術が必要だと言われたが,あっちでは必要ないと言われた.一体どっちが本当なんだ.
もっと早くこちらへ来れば手遅れにならずに済んだのにと言われた.前医は誤診したのだろうか.
等々,日常の診療で患者が抱く疑問や不安は数知れない.しかしほとんどの人は,担当医に問い正すこともできず,一人悶々と悩む日が続く.そんな時,第三者の立場にある専門家に相談できれば,どんなに心強いことだろう.
需要は非常に多い.患者本人に対する診療報酬明細書やカルテの開示が進めば,ますます医療インスペクターの業務は拡大するだろう.専門家の責任あるコメントをもらえるとなれば,それにふさわしいお金を払ってもいいという人はたくさんいるに違いない.ビジネスとしてきわめて有望である.
医師にとっても医療インスペクターの存在は決して悪いことではない.何よりも患者教育になる.正しい知識を持った患者は,質の高い医療の一番の理解者である.だから,医療インスペクターの存在は,日本の臨床医学のレベルが上がるのにも貢献するだろう.
こんな,いいことずくめの医療インスペクターの会社,誰か始めませんか?そして僕を高い給料で雇ってくださいな.(別のページで医療事故相談窓口を紹介してあります