お楽しみはこれからだ

6月25日,厚生省がようやく医者,歯医者の勘定書の公開を認めた.医師,歯科医師による保険の不正請求を減らし,ひいては増え続ける医療費を減らすのが狙いらしい.

では一体これまで公開を拒否していたのは,どういう理由だったのか,それがなぜここへ来て公開する気になったのか,根掘り葉堀り聞いてみたいもんだが,それよりもまず先へ進もう.

”患者の不利益になる場合を除いて”という,例によってわけのわからない,そしてどうにでも解釈できる条件がついているが,まずは一歩前進,橋頭堡ができたわけだ.しかし,これで安心してはいけない.お楽しみはこれからだ.

診療報酬明細書(レセプト)公開で不正請求や医療費を減らすなんていうのは,いかにも木っ端役人が考えそうなことだ.しかしレセプト公開の真の効能は,そんなけちくさいもんではない.診療の内容が簡潔でわかりやすい形で公開されるということだ.場合によっては,医者がわけのわからない横文字を書きなぐって,挙げ句の果てに改ざんされた分厚いカルテなんぞより,よっぽどわかりやすいだろう.レセプトを見れば,どんな病名のもとに,どんな検査がされて,どういう治療が行われたのかが一目瞭然である.わかりやすいということは,嘘が書いてあっても見破りやすいということでもある.

何も診療内容に不信がなくても,自分の命がどんなふうに料理されているのか,少しでも興味がある人は,レセプトを要求して勉強したらよろしい.医者に対しても,お前の診療を疑っているのではない,自分の体のことをよく知っておきたいからだと,堂々と宣言してレセプトを要求したらよろしい.それでも文句を言う奴は,どこかにやましいところがあると思って,さよならしなさい.

患者が医療の監視者として医療に積極的に関与,介入しないと医療は絶対によくならない.そのためには患者は勉強しなければならない.大変な労力と時間がかかる.さまざまな人間との軋轢も生まれるだろう.しかしそれにひるむことなく,発言し,行動しなくてはならない.そうでなければ医療は変わらない.不正請求や医療費が減るというのは,あくまで,医療の改善の結果のごく一部に過ぎない.それを主目的と考えるのは,木っ端役人に任せておけばよろしい.

”とにかく,先生にお任せします”というのは,権利と責任と義務をいっぺんに放棄した発言であり,”誰がやっても同じだから,投票に行かない”という,日本全国に蔓延する政治的アルツハイマー病患者特有の,天に唾する発言と全く同じである.患者が賢くならなければ,日本の医療はいつまでも日本の政治と同じ状態であり続けるだろう.

何も勉強しないで,自分がかかる医者を片っ端から疑ってかかって喧嘩を売れと言っているのではない.そんなことをしても医療はよくならないし,あなたは損をするだけだ.客から金をもらう資格のない一部の仕事,そういう仕事を見破るためにはそれなりの勉強が必要である.自分の命を守りたかったら,そういう努力を怠らないことだ.

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