専門医という名のお目出度さ

「西大寺静然上人(さいだいじ じょうねんしょうにん)、腰屈まり、眉白く、まことに徳たけたる有様にて、内裏へ参られたりけるを、西園寺内大臣殿、「あな尊(とうと)の気色(きしょ く)や」とて、信仰(しんぎょう)の気色ありければ、資朝卿(すけともきょう)、これを見て、「年の寄りたるに候ふ」と申されけり。後日に、 尨犬(むくいぬ)のあさましく老いさらぼひて、毛剥げたるを曳かせて、「この気色尊く見えて候ふ」とて、内府(だいふ)へ参らせられたりける とぞ」(第152段

医師免許を持った人は,ただ歳を取っているだけでは不安なようで,論文だの,肩書きだの,いろいろなワッペンをつけたがる.そういうワッペンの一 つが「専門医」だ.中身如何には関係なく,常に自分が「新しい」と見せる仕掛けが好きなのだろう.専門医が新しい薬を使いたがるのも,「新しい薬 は常に古い薬よりも優れている」という思考停止にどっぷり浸かっているからだ.

新しい薬ほど,有効性・安全性のエビデンスレベルが既存治療よりも劣ることは医学生でも知っている.だとしたら,「専門性」の意義とは何なのだろ うか?年を取って愚かになるという意味だけなのだろうか?他の降圧剤よりもバルサルタンを推奨していたのに,昭和20年8月15日を境に帝国臣民 の態度が一斉に変わったのと全く同じようにノバルティス社を非難し始めたのも「専門医」だった.
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糖尿病新薬「早く使ってみたい」非専門医は2割未満 同類薬多く「分かりにくい」は5割
ミクスオンライン 2014/04/10
https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/47755/Default.aspx
 マーケティングリサーチ会社のインテージが糖尿病診療に携わる医師を対象に実施した調査によると、「新しい作用機序の薬剤を早く使ってみたい」 と考えている医師が、専門医では45%だったのに対し、非専門医は18%にとどまることがわかった。非専門医の3分の1は「いろいろな作用機序の 薬がありすぎて、その使い分けが難しい」と回答しており、新薬処方に消極的な背景に情報や知識の不足があるものと推測された。
 調査は1月31日~2月6日に実施したもの。調査対象は、同社グループ会社のアンテリオの医師パネルうち、19床以下の施設で直近1カ月に、2 型糖尿病患者30人以上に薬物治療している医師。有効回答医師数は計200人で、内訳は専門医86人、非専門医114人。方法はインターネット調 査。
 糖尿病治療薬は現在、標準的治療として用いられているDPP-4阻害薬が7成分8製品ある。14年中には新規機序のSGLT2阻害薬の発売が見 込まれ、4月9日時点で4成分5製品が承認済み、2成分が申請中となっている。こうした状況を反映してか、非専門医の半数が「同じ作用機序の薬で もいろいろなブランドがありすぎてその違いが分かりにくい」と回答し、「患者さんの状態に合わせた薬剤選択が的確にできているか不安になることが ある」とする医師も45%に上った。

◎医師のニーズとMRの情報提供にギャップも
 非専門医がMRに期待している情報内容では、▽自社薬剤の特徴▽自社製剤をどのような患者さんにどのように使用したらよいか▽いろいろな薬剤の 使い分け――の各項目がいずれも7割を超えた。実際にわかりやすく説明できているか聞いたところ、「自社製剤の特徴」については66%、「自社の 薬剤をどのような患者さんにどのように使用したらよいか」については53%が「(説明)できている」と評価していたが、「いろいろな薬剤の使い分 け」では38%にとどまっていた。
 また、非専門医の7割近くが「患者さんの治療を第一に考えた説明をしてほしいと期待しているものの、実際にできていると評価している医師は8% 程度で、この項目が最も期待と評価に開きがあった。
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一方,中医協が,最新の肥満症治療薬に対して,落日の大製薬会社に同情が集まるほど醒めた見方ができるのは,委員の中に肥満症の専門医は一人もい ないからだろうか.日本版HTA/NICEの議論自体は下火になってしまったが,現実には中医協自身がその役を買って出るようになるとは思わなん だ.
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厚労省  オブリーンの再提案せず、「データ示されていない」(日刊薬業  2014年4月9日 )
 厚生労働省は9日の中医協総会で、薬価収載が保留となったままの武田薬品工業の肥満症治療薬「オブリーン」については再提案を行わなかった。再 提案しな かった理由について、厚労省保険局医療課は総会終了後の記者団の取材に「データを頂いていない」と述べ、中医協委員を納得させることのできるデー タが企業 側から示されていないと説明した。
 オブリーンの収載の可否は昨年11月の中医協総会で審議されたが、複数の委員から心血管イベントや原疾患のリスクファクターの解消を示す基本的 なデータ が示されていないことに異論が相次ぎ、了承されなかった。現在、武田薬品からの追加のデータ提出を待っている状態で、医政局経済課はじほうの取材 に「武田 から適宜相談を受けている」と述べるにとどめた。
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