Remdesivirの限界
重症例には使えない問題:ギリアド、苦しいな。今時NEJMの名前に頼っているようじゃ足下を見られるだけだ。もちろんベクルリーはアビガンみたいなイカサマじゃないことも、そしていち早くRCTを行って結果を出して「努力賞」には値することも認めよう。一方、WHOが問題にしているのは、高流量酸素、人工呼吸器/ECMOを必要とする入院患者である。人工呼吸器・ECMOを回避できるか・生きるか死ぬかのハードエンドポイントが切実な問題となる。しかしベクルリーはそこが手当できていない。そのことはギリアドがエビデンスとして掲げるNEJMのFinal report(N Engl J Med 2020; 383:1813-1826)を見れば明らかだ。一番分かりやすいのは、この論文のTable 2. 肝心の入院加療を要するOrdinal Score at Baselineの6(高流量酸素必要群)と7(人工呼吸器/ECMO)の2群で救命効果が全く見られない。救命の有効性は全面的にOrdinal Score at Baselineの5(通常量の酸素投与群)に依存している。レムデシビルの有効性はただ同然の値段のデキサメタゾンに肩を並べるどころか臍の高さにも及ばない。(2020/11/25)
----------------------------------------------------------------------------------------
WHO 新型コロナ治療薬・レムデシビル「入院患者への投与を推奨しない」 米ギリアドは反論のコメント発表 ミクスオンライン 公開日時 2020/11/22 04:50
世界保健機関(WHO)は11月20日、新型コロナ治療薬・レムデシビル(製品名:ベクルリー)について、「入院患者の生存率やその他の転帰を改善するというエビデンスが存在しない」と
して、入院患者への投与を推奨しないと、ガイドラインに盛り込んだ。これに対して米ギリアド・サイエンシズは、これに反論するステートメントを発表。「有効性・安全性を評価する“ゴールドスタンダード”であるランダム化二重盲検プラセボ対照臨床試験を含む3つのランダム化比較臨床試験で有効性が実証されている」などと反発した。
WHOは、レムデシビルに関する4つの臨床試験、7000人以上のデータを解析したところ、死亡率や人工呼吸器の必要性、臨床的改善までの期間などに「重要な影響がない」ことを示唆したとしている。それにより、重症度によらず、同剤の入院患者への投与は推奨しないと結論付けている。
◎米ギリアド NEJMの論文を引き合いにエビデンスを強調
一方、米ギリアド側は即座に反論する。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のACTT-1試験で、レムデシビルの投与により、プラセボに比べ、5日間早く回復したとのデータを説明。ピアレビューされ、「New England Journal of Medicine」に論文が掲載されているとして、エビデンスがあることを強調した。また、この結果に基づき、複数の治療ガイドラインで推奨されているとした。
WHOの見解については、「WHO主導の連帯試験データのデータに依存している」と指摘。同社らが実施した臨床試験などについては、「主要なデータは入手できず、ピアレビューもされていない」と反発した。そのうえで、WHO主導の試験結果はこれまでの臨床試験結果と「一致していない」としている。
◎限られた医療機関のリソース活用に貢献 エビデンス軽視は「残念」とコメント
そのうえで、「日本や英国、ドイツなど、多くの信頼できる国内組織のガイドラインで、COVID-19による入院患者の治療の標準治療として認められている」と説明。入院期間の短縮により、限られた医療機関のリソースの有効活用などに貢献しているとして、「WHOがこれらのエビデンスを無視しているように見えるのは残念だ」としている。
----------------------------------------------------------------------------------------
WHOの評価だけでは公平性を欠くので、NICEの評価を見てみると、WHOと大差はない印象。(ただし2020年6月4日時点のreviewであり、それ以降はアップデートされていない点に注意)
COVID 19 rapid evidence summary: Remdesivir for treating hospitalised patients with suspected or confirmed COVID-19 Evidence summary [ES27]Published date: 05 June 2020
Conclusion(太字は池田)
The included studies in this review suggest some benefit with remdesivir compared with placebo for reducing supportive measures including mechanical ventilation and time to recovery in patients with mild or moderate, or severe COVID-19 disease who are on supplemental oxygen treatment. However, no statistically significant differences were found for mortality and serious adverse events (fewer reported with remdesivir compared with placebo). More treatment discontinuations were reported with remdesivir compared with placebo due to adverse events (Wang et al. 2020). A subgroup analysis
reported in Beigel et al (2020) suggests that some groups may benefit more than others however this data needs to be interpreted with caution given the wide confidence intervals and lack of adjustment for multiplicity. Therefore this limits the applicability to clinical practice when assessing which patients are most likely to benefit from remdesivir.
→目次へ戻る