大分専門的なことになりますが,国立病院・療養所の重症心身障害児(者)病棟に関して,ある先輩医師とやりとりするにあたって,その実情と,私が勉強したことをご参考までに紹介します.
1) 全国に90カ所ほどあるという国立病院・療養所の重心病棟のうち、明確に「動く重心児病棟」という名目の病棟はあるのですか(あるように聞いているのだが・・・)。
正確には,現在,国療・重心病棟全国で78箇所です(下記参照).そのうち8箇所,600床が動く重心児(者)向けに特化していることになっています.実は当院もその一つなのですが,下記に示したような体たらくで,動く重心児(者)に対する特別な処遇をしているわけではありません.
2) 国療・重心病棟とは別に、国療ですから精神科病棟などが併設されていることが
多くあると思いますが、ここにいる「動く重心」に相当する人は(当然いるはずだ
が?)、措置が重心と別ですよね。この管理運営は?
精神遅滞が重度の方は,重心に入っています.そうでない場合,例えば分裂病の欠陥状態などは精神科の病棟に入院しています.少なくとも当院の場合,振り分けがはっきりしていて,どちらに行ったらいいのか迷うような患者さんはいません.
3) 混乱していることを承知でおたずねしていますが、先生方の重心施設は医療法上の何の病棟ですが。というのは、私が知っているある法人立の重心病棟は「精神病院」として届け出ているので、医師や職員の配置基準が緩やかなのだそうです。重心病棟そのものが「精神病棟」として届けられているのなら、精神保健指定医の数は病院全体で兼務などできるのでしょうか。
国療の重心はすべて医療法上の一般病棟です.ですから,精神保健指定医は不要です.しかし,一般病棟だからといって,重心単独で一般病棟医師や職員の配置が守られているわけではありません.病院全体で満たしていればいいからです.当院では,私のような臨床研究部生化学研究室長や精神科医・神経内科医が兼務していて,重心専従は一人もいません.医師以外の職員に関しても,下記のような,重心職員枠の他部署への流用が公然と行われており,重心の配置基準はおろか,一般病棟の配置基準さえ守られていません.
4)重心病棟で治療上「拘束」の責任は、精神保健指定医はどのように負うのですか。
重心棟は一般病棟扱いですから,点滴の際に上肢を縛り付けるなどの四肢の固定は,精神保健指定医でなくてもできます.精神病床における一定の時間を超えた四肢の固定は,精神保健指定医でないと指示できません.
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