未承認薬なら何でもかんでも承認すればいいってもんではない.なんでもかんでも承認して,患者が必ずハッピーになるわけではない.
承認されたら,個人輸入のものが使えなくなる.たとえ個人輸入のものを医者のところに持っていったとしても,医者は,そんな「危ないもの」は「もし何かあった時に責任が取れないから嫌だ」と言って使ってくれない.
もう後戻りできなくなってしまった.承認って,一体誰の幸せのためだったのだろうか?そう考えると,未承認薬問題は,医薬品に関するliteracyについて,良質な学習材料を提供してくれることがわかる.
命のリスクとベネフィットは自分で判断するから,その分,薬を安く買えた方がいい.だから未承認のままでいい.個人輸入できた方がいい.「厚労省に,PMDAにすがりつくリスク」は真っ平御免だ.そういう判断をする患者がいてもいい.そういうリテラシーを持つ人間が育ち,声を上げられる世の中があってもいい.
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「承認されたのに入手できない」多発性骨髄腫患者団体がサリドマイドの患者負担軽減を要望
産経MSN 2009.3.2 20:09
多発性骨髄腫の治療薬として昨年10月、医薬品「サリドマイド」の販売が46年ぶりに再開されたが、薬価が高すぎることなどから、多くの患者が入手できない事態になっているとして、「日本骨髄腫患者の会」が2日、厚生労働省に患者負担の軽減などを求める要望書を提出した。
同会によると、国民健康保険を使い3割負担の場合でも、サリドマイドの薬代は1カ月に約5万9000円。製造販売が承認されるまで、メキシコやインドから個人輸入していた同薬は1万8000円程度だったという。
サリドマイドは、過去に胎児へ重大な薬害をもたらした経緯がある。そのため、厚労省は製造販売を承認する条件に、メーカーの安全管理システムの実施を義務付けた。メーカーは薬の正しい知識を伝え、登録した施設や医師、患者にしか薬を販売できない仕組みになっている。
このシステムにかかる費用や登録の遅れなどから、患者が薬を入手できない状況が発生しているという。個人輸入によりサリドマイドを利用してきた患者は約1000人いるが、いまだ登録患者数は95人(2月26日現在)にとどまっている。
要望書では、補助金など患者の経済的負担軽減策の策定や、全患者が投薬を受けられるまでの、個人輸入の継続などを求めている。
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標題に間違いがある.「承認されたのに入手できない」ではない.「承認されたから入手できなくなった」だ.
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◆厚労省 サリドマイドの円滑供給で藤本製薬に申し入れ
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多発性骨髄腫治療薬サレドカプセル(一般名:サリドマイド)が薬価収載から
3ヵ月近くたつにもかかわらず、入手できないケースもあるとして患者会が改
善を求めたことを受けて厚生労働省医政局経済課は3月3日、製造販売元の藤
本製薬に対し円滑な供給に関し口頭で申し入れた。
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経済課がいくら「口頭で申し入れた」って,企業に,こんなに厳しい市販後体制をやる体力がなければ,供給は進まない.審査管理課としては,「やるべきことはやった」,安全対策課としても「やるべきことはやってもらわないと」.医療課としても「それなりのご褒美の薬価をつけないと,これからこういう開発をする企業は現れない」.それぞれの部署はあっぱれ,やるべきことをやった結果がこれだ.