ガイドラインという名の祈祷書
元気のいい学生さん(女性)とのやりとり

> ※日本の学会が個別に出しているガイドラインは、
> このエビデンスレベルの基準が
> 学会によって異なってるんですね!
> 今回ちょこっと調べていて、初めて知りました。

いいところに気づきましたね.そうです.日本の学会が個別に出しているガイドラインでは,エビデンスレベルを判断する基準がばらばら
というか,共通の基準が何もないのです.いかにばらばらかは,EBM関連のToolBoxから,「国内ガイドラインの推奨度」というエクセルファイルをダウンロードしてみれば一目瞭然です.

日本のガイドラインは,ガイドライン作成委員という肩書きを持った(仕事を押しつけられた),学会のおじさん達のバイアスの固まりに過ぎません.バイアスの固まりならば学会ごとにばらばらになるのは当然です.多くの人が診療の根拠にするガイドラインが,実は祈祷書同然の代物だったというわけです.

EBMの何たるかも知らないand/orEBMを理由無く敵視していたりもするおじさん達が,一体どの雑誌のどんな規模の,どんな質の臨床試験のどんな結果を判断材料にするかという共通の判断基準なしに,コクラン・システマティックレビューに載っていればいいだろうとか,「大きな」RCTが3本「トップジャーナル」に載っていればいいだろうとか,ひどくいい加減です.これはひどく時代遅れのやり方です.少なくとも北米と西欧では,GRADEシステムに則って診療ガイドラインが作成されています.GRADEシステムワーキンググループが発足したのは10年も前ですが,驚くべき事に,日本の学会が作成したガイドラインの中で,GRADEシステムに則って作られたものは一つもありません.

GRADEのことを詳しく勉強したい方は,「診療ガイドラインのためのGRADEシステム」を手にとって,(始めから精読するより,まずは)ぱらぱらとめくって見てください.

ちなみに,EBMの学習書として定評のあるJAMA-UGの訳本「医学文献ユーザーズガイド 根拠に基づく診療のマニュアル」が,上記GRADEシステムとほぼ同様の訳者(こちらには私も入っていますが)によって出ています.

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