SHARP Trial
またまたスキャンダラスなランセット

エゼチミブはスタチンと異なる機序でLDLコレステロールを下げる薬ですが、スタチンよりもパワーが弱く、単独使用は意味がありません。限られた症例にスタチンの上乗せでしか使えない、スタチンあっての位置づけです。ウルトラマンでの科学特捜隊、ウルトラセブンでのウルトラ警備隊のような存在です。

米国とカナダの間には国境はありますが、同一の医薬品について、リスク・ベネフィットバランスの差はないと考えられています。しかし、エゼチミブについては両国の間で使用実態が大きく異なります。両国間では、財布(誰の?)の中身に対するリスク・ベネフィットバランスの差が歴然としているということです。

その高いお薬を使って、ランセットが、またまたやってくれました。シンバスタチン単独群とエゼチミブ上乗せ群とでは有意差がつかないので、まるきりのプラセボと勝負させた試験です。このSHARP Trialが明らかにした成果は次の通りです。

1.血管性イベントのリスクのある人に5年間もスタチンを飲ませない非人道的なデザインに、なぜ文句がつかなかったのか?施設の倫理委員会とランセットの編集部の双方が機能していないことが明白です。

2.コレステロール値を計りながら試験を進めていますから、複合エンドポイントのうち、盲検がかからないPCIを含むRevascularisationproceduresには、意味がありません。複合エンドポイントから、Revascularisation proceduresを除くと、プラセボと有意差が付くかどうかも危ういところです。

3.結局、これだけ非人道的な試験をやっても、プラセボとほとんど差がなかったのだから、わざわざエゼチミブを上乗せする必要がないエビデンスを示してくれたというわけです。

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