いつの世でも時間は最強の審判員である。ノーベル賞とてその厳しさを免れない
1926年に受賞したヨハネス・フィビゲル(Johannes Andreas Grib Fibiger)。彼の寄生虫発癌説は今から50年以上も前に否定されてしまったので、もうフィビゲルの名前を覚えている人も消え失せた。前頭葉ロボトミーで受賞したエガス・モニスに対しては、患者や家族による受賞取り消し運動が今でもあるとのことだ。
医薬品のアウトカム評価も、時間の助けを借りて、つまりずっと後から判断した方が的確にできるに決まってるから、ドラッグラグが生まれるのはむしろ自然の成り行きである。限られた開発資源・厳しい開発環境の中で生まれた、医薬品開発の知恵の結果がドラッグラグだ。賢いんですよね。日本人は。それを自己否定しちゃいけない。だから、ドラッグラグは、「時間差開発」と言い換えればいい。薬価維持特例を、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」なんて言い換えるより、ずっと洒落ている。
ドラッグラグという言葉は思考停止を起こす。ファッションでさえ、最新流行を追うのを必ずしも良しとしない。なのに、ファッションよりもリスク・ベネフィットバランスの判断を慎重にしなければならない医薬品で、最新流行を追うのを必ず善とする背景には、大政翼賛会的思考停止に基づく新薬真理教思想がある。