下記の記事はお勧めだ.各ステークホルダーのばらばらの思惑が交差し,混乱していることがよくわかる.記事を読んだだけでも,厚労省,政治家,薬害被害者団体,PMDA,製薬企業と,様々な利害関係者が,それぞれの内部で意見がまとまっていないことがよくわかる.10ぐらいのチームが総当りでリーグ戦をやっているというような整然とした戦いではなく,プロレスのバトルロイヤル並みの乱戦という感じ
どうなる「医薬品庁」構想?“着地点”は未だ見えず(薬事日報 2008年06月20日)
ドラッグラグ解消のために,真に有効は方策は?
ドラッグラグを解消するために審査部門の人数を増加させるというロジックは,これまでさんざん使いまわしてきて,さすがに新鮮味がなくなった.そもそも,このロジックは「嘘」だということになっている.
だって,ドラッグラグは審査期間の長さが原因なのではなく,開発の遅れが原因だと誰もが理解するようになったし,審査の人数を増やしても,蟹工船のような労働条件を緩和するには役立っても,審査期間は短縮できないことも多くの人が当然のこととして理解するようになったからだ.
実は,ドラッグラグ解消のためには,審査員の人数を増やすのではなく,逆に日本独自の承認審査体制をなくしてしまうのが,一番手っ取り早い.実際に,日本と同じく,白人と異なる民族による単一国家であり,医療インフラも類似している韓国も,民族は白人が多いが,国民皆保険制度が徹底しているオーストラリアも,独自の審査体制を持っていない.だから,承認審査はFDAの決定をほぼそのまま受け入れている(注1).だからこそ,ドラッグラグが無い.だから,やたらとFDAの判断ばかり賞賛する鹿鳴館主義者でなくても,ドラッグラグ解消のことだけを考えるのであれば,日本に独自の承認審査は要らないと考える.
いまさら鹿鳴館?
日本のFDAという名の鹿鳴館妄想は,「おらが村にも白亜の総合病院を」「我が県の国際化推進のためにも空港を」って発想よりもさらに滑稽。というのは、病院や空港はローカルなものはそれなりに地元の必要性があるが、承認審査や安全性の判断は、「国際共同」なんだからね。FDAの判断が素晴らしいのならば、それを真似するだけでフィリピン化すればいいという素直な主張に対抗できない。日本のFDAという名の鹿鳴館妄想の最大の弱点は、隣の家に大型テレビがあるから、自分も欲しいというガキ並みの無邪気な発想にある。
国際共同治験時代に,日本の居場所はどこにある
悪名高い組み入れ速度の低さと高コスト体質が嫌われて,国際共同治験への日本の参加そのものが困難となっている環境に改善の兆しは無い.それでも,何とかと頼み込んで仲間に入れてもらっても,生活習慣病関係の試験などでは,1000人中日本人が50人というような試験はざらに出てくるだろう.この程度であれば,何も無理矢理日本が参加しなくても,合衆国内のアジア人で十分代替可能という議論も出てくるだろう.このように,国際共同治験がどんどん進めば,日本人被験者のデータも,以前よりどんどん少なくなっていく.したがって日本独自の審査の必要性もどんどん低くなっていく.そんな時代に,日本独自に重装備した規制当局が,なぜ必要なのか,説明を求められる.
参考:医薬品庁?