北陵クリニック事件の「功績

明日(あした)はあなたも殺人犯」(瀬木比呂志著 ニッポンの裁判、講談社)は、日本の裁判全体が中世裁判そのものである第一級のエビデンスを提示している。また、やはり元裁判官の弁護士である森 炎氏 は、自著「教養としての冤罪」(岩波書店)の中で、「裁判は真実発見の場ではない」「刑事裁判はすべて冤罪である」と明言している。瀬木氏も森氏も医療事故裁判については一切言及していないが、北陵クリニック事件は、彼らの観察が医療事故裁判にもすべて当てはまることを示している。

北陵クリニック事件の「功績」は,以下の事実が決して都市伝説ではなかったことを白日の下に晒した点にある.
●科学捜査に科学は存在しないこと
●検察官も裁判官も,科学についても医学についても何の教育も受けていないために何も全く理解していないこと.だから医事裁判は全て黒山羊さんと白山羊さんのやりとりであること
●それゆえ,あらゆる医事裁判がトンデモ裁判となってしまうこと.
●かくして医事裁判では,民事の場合は勝ち負けはサイコロで決まり,刑事の場合には99.9%の確率で検察が勝つことが裁判を始める前から決まっていること.
●そして「正義が勝つ・科学的・医学的に正しい主張をすれば必ず勝つ」という信仰が妄想に過ぎないこと

北陵クリニック事件の解明は,アウシュビッツの中身を博物館として公開する作業にも似ている。その作業を続けていくと,再審請求棄却の最大の問題点も,以下のように明らかとなる.
この再審請求棄却は:
● メディア,警察,検察,裁判所への信頼を一遍に失わせた.メディアが報道しないことは,警察・検察・裁判所にとって不都合な真実であることを意味する.自 信があれば,はえのようにうるさい池田を潰してやったとばかりにもっとメディアに誇らしげに報道発表を垂れ流すだろうに,それをまるで子供が自分の寝小便 をしたシーツを隠すように,紙面の隅のベタ記事としてしか掲載しなかった.
●私をやぶ医者よばわりする空想医学物語を公文書として公開していつまでも残るようにしてしまった
● 私をやぶ医者よばわりする警察官や裁判官や検察官が批判されずに昇進していく組織には,医療機関を捜査し,医療者を起訴し,有罪にすることはできるが,医 療事故調査をして原因を究明し事故防止策を立て,それをまた検証する.そういうPDCAサイクルを回すことはできない.そういう堅い暗黙の合意が形成され てしまった.そしてこの合意に従わない者は,北陵クリニック事件に関わった医師と同じペナルティを受ける.つまり自分の保身のために仲間を売る.患者の人 権を踏みにじる検察官や裁判官のお仲間と烙印を押される.そういう合意も形成されてしまった

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