超高級廃棄物処分場

今、日本で市販後安全性を議論している人々は、全員データベースのことで頭が一杯で、データベースさえできれば、科学性が担保されるという幻想にどっぷり浸っています。しかし、所詮幻想は幻想です。規制当局と連携してデータ収集体制を整備することなしに、ノイズばかり拾ってデータベースに入れても、新たな(後述)超高級廃棄物処分場ができるだけです。

現行の日本の市販後体制では、海外と共有して世界中の人に役立ててもらえる(もう少し端的に言うと、まともな英文の論文が書ける材料を提供してくれる)データベースなんかできっこないのに、市販後体制そっちのけで、データベースの議論をしています。

あれほど手間暇かけて、企業にとって膨大な負担となっている全例調査でさえ、あくまでMRが情報を集める調査であって、結果を英文で発表できない。つまり、すでに、超高級廃棄物処分場の伝統が確立されているのです。

レギュラトリーサイエンスと言うのなら、市販後安全性に関する規制にもサイエンスを!のスローガンのもと、私が提案するのは以下の2点です。

1.市販後調査を臨床研究にする
(市販後臨床試験以外の)市販後調査を、企業がアカデミア・施設とそれこそ契約して、臨床研究の形でやれるようにしましょう。それなら、施設の方も「負担」と考えずに、進んでやるわけですし、必然的に研究期間・エンドポイントを明確に定ることになりますし、アカデミアから(企業の協力も得て)英文論文も出せるわけです。そもそも承認前の治験は、あくまで企業が施設に依頼して行います。承認後はその薬を施設が使うわけですから、市販後調査も、施設が主体となって自主的にやるのが本来でしょう。自分でやってデータを集めれば、それが論文になる。お金では買えないインセンティブです。施設が積極的に関与することによって、データの中立性も増します。

2.PMSも世界標準に
治験が国際共同になっているのですから、当然postmarketing studiesも海外と共有できる形にすべきです。なのに、PMSに限って、グローバルスタンダードというバカの一つ覚えが出てこないのは、「世界に冠たる日本の市販後安全体制」という根拠不明の信仰ゆえでしょうか?市販後安全体制については、欧州が先行していると理解していますが、FDAも1年前にようやくPMSのDraft Guidanceを出しました。そうなったら、もう彼らのことですから、仕事は早いでしょう。もちろん彼らのことですから、PMSも、アカデミアが主導する臨床研究として行うでしょう。我が国の関係者の方々は(規制当局ばかりじゃありません、企業だって、そして大学だって、当事者なんですよ!) そうなっても、まだ、「世界に冠たる日本の市販後安全体制」を維持する覚悟なのでしょうか?

目次へ戻る