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真摯な態度にはほど遠い名大報告書 ディオバン研究責任者は「我われのミス」と言うが 医薬経済2015年02月15日号

「論文の主張の真偽を判定することはできなかった」
  果たして、このような指摘を受けた論文を信じることができるだろうか。昨年12月19日、名古屋大学が降圧剤「ディオバン」(一般名=バルサルタン)の臨 床試験疑惑の最終報告書を発表した。姉妹紙「RISFAX」では、報告書について、「臨床試験の結果、証明できず」(12月22日付)と報じた。根拠とし て冒頭のような文言が報告書の結論に書かれていたためだが、数日後、この記事に対し、名大から抗議を受けた。
 抗議は公正研究委員会の藤井良一委 員長(副学長、写真)からで、記事の内容が「不本意」とのことだ。他紙は「研究結果、信頼できる」「データの恣意操作なし」などと報道しており、なぜ RISFAXだけが、「証明できず」と書くのか理解に苦しむという。なるほど、報告書は、「データに恣意的な変更が加えられた形跡はなかった」「データ及 び主要な結果は信頼できる」とも記載している。藤井副学長は、この部分を取り上げて「問題はなかった」と言いたかったようだ。
 おそらく報告書に 冒頭のような記述がなければ、そう報じていたに違いない。だが、疑問があった。なぜ、報告書はデータを信頼できると書いておきながら、一方で論文の主張の 真偽が判定できないと記載したのか。その理由は「データ作成」とは別にある。「論文作成」段階での疑惑だ。

「定義」で誤魔化し
 名大でディオバンの臨床試験を行ったのは、循環器内科の室原豊明教授。2型糖尿病か耐糖能障害がある高血圧患者1150人で、ディオバンとカルシウム拮抗剤の「アムロジピン」(一般名)の効果を比較した。「NAGOYA
HEART Study」と名付け、12年に主論文を米国心臓病学会の学会誌『Hypertension』に発表した。
 論文では、「心不全による入院」が、ディオバン群で3例だったのに対し、アムロジピン群は15例だったと報告。ディオバン群で、「心不全による入院」が有意に少なくなると結論付けた。しかし、名大の報告書を読むと、この論文の結果が間違いだったことがわかる。
 報告書は、論文では「心不全による入院」の症例数を用いたとしているが、実はその数には外来患者を含めた「悪化による追加治療」が加えられていたと指摘する。
  名大が第三者機関である「臨床研究情報センター」(TRI)に依頼した調査結果によると、〝少なくとも〟アムロジピン群で4例が実際に入院していなかっ た。〝少なくとも〟というのは、カルテを確認できない症例があり、ほかにも可能性があるからだ。入院は11例以下で、この人数で改めてディオバン群と比較 すると、両群の有意差は境界域に入り、ほぼ差がない状態になる。つまり、本来加えるべきではない症例を含めることで、ディオバン群に有利になる結果が導か れた可能性がある。これは症例の「水増し」に映る。
 水増しだとしたら、どのような方法だったのか。名大の試験は、臨床試験そのものはきちんと行 われている。ディオバンを販売するノバルティスファーマの社員が統計解析に関っていたが、データが改竄された形跡はなく、信頼に足るものだ。このため藤井 氏が試験の「データや主要な結果は信頼できる」と述べるのは正しい。が、確かにデータはいいのだが、残念なことにこのデータは「論文の定義」に沿って得ら れていない。
 調査によると名大の試験は、別の定義が記載された研究計画書(プロトコル)に従って行われたことが判明している。この研究計画書 は、「心不全」に入院のほか外来も含めるというもので、論文の定義とは別ものだ。それにもかかわらず、論文には、研究計画書の定義に基づくデータが使用さ れたため、入院以外の心不全患者の症例が含まれる結果となった。
 そうなると研究責任者である室原教授が、論文を書く段階で、ディオバンに有利になるよう意図的に別の定義で得られたデータを使った疑いが出てくる。
 本誌は室原教授に、取材を申し入れ、教授も一旦受け入れた。しかし取材直前に教授から「大学の本部から、私が勝手に貴社の取材に応じることは大変問題であると、警告を受けた」との連絡が入り、突然中止となる。
 名大は1月19日付のRISFAXが「ディオバン有利に、心不全4例水増し」と報じたことが不満だったらしく、「取材には一切協力いたしかねます」との文書を送付し、取材を拒否した。
 一方、室原教授は、真摯に説明したい意向で、疑問点にはメールで回答があった。室原教授の説明によると、研究計画書は学内の倫理委員会に提出した後、「若干の変更」があったという。
「変更された研究計画書は海外サイト(Clinical
trials.gov)で公表した。しかし、学内の書式は変更しないまま最後まで来てしまった。最終的に『プロトコルと論文で心不全の基準が異なる』という誤解を生じやすい事態を生んでしまった。これは我われのミス」
 論文と違う定義が使われたのは、あくまで変更手続きの「ミス」との主張だが、それを知っていたのなら、変更前の研究計画書に基づいて論文を執筆すればよかったはず。有意差がほとんどない境界域のためインパクトがないとしても、疑いを持たれることはなかった。
 「論文のインパクトは減ります。何よりも海外の研究よりも症例数が少ないため、著名雑誌にはことごとく落選しました」
 当初の研究計画書に基づく試験結果では、海外では相手にされなかったらしい。
「海外に発信するという目的が主でしたので、海外サイトのほうに重きを置いて基準を考慮しました」
  「基準を考慮」という曖昧な表現だが、要は外来患者であっても、「入院相当」の症状については、症例数に加えたという。その結果、米国心臓病学会の学会誌 に掲載された。論文を通すために「基準を考慮」して症例を水増ししたのではないかと疑ってしまう。「入院相当」というのは、入院するほど心不全の症状が重 いという意味だが、これは国際的な基準でいえば除外されるべき症例だ。
 「『心不全による入院だが、拒否したケースも含む』と書くべきだったと思っている。現在、訂正文を作成している」
 室原教授は、論文の定義に問題があったことは認めたが、症例の「水増し」ではないと反論。意図的に都合のよい定義を使ったこともないと強調した。
  ノバルティスは、室原教授が発表した論文をもとに、ディオバンの宣伝を行ってきた。室原教授も、ノバルティスが提供する医学雑誌で論文を紹介している。さ らに同氏の研究室には、02~12年にかけて計2億5200万円もの奨学寄附金が提供されていた。ただ、室原教授はノバルティスへの配慮について、「まっ たくない。そのようなことで結果が変わるようなら、日本の臨床科学は終了だ」と主張している。
 ディオバン事件は、製薬企業の社員がデータを改竄して不正な論文を作成したと見られているが、今回のケースも疑問は燻ったままだ。室原教授は訂正すればいいと考えているようだが、国際的な医学誌が、室原教授の修正を受け入れるとは限らない。
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