FDAはドラッグラグの元凶?

法廷の見解では,末期患者は治療薬のFDA(米国食品医薬品局)承認を待たなければならない
Terminally ill must wait for FDA approval of drugs, court says

(以下、個人的に訳出してみました)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 末期患者に対して,FDA(米国食品医薬品局)未承認の薬物を使用する憲法上の権利が認められていないと,先週,連邦控訴裁判所は裁定し、規制当局による現行の審査制度を変えようと訴訟を起こした患者団体の訴えを却下した。

Abigail Alliance for Better Access to Developmental Drugsと呼ばれるこの団体は、末期癌患者が、新規抗癌剤処方のためにFDAの承認を待たなくてはならない現行制度は、患者の自己防衛権を侵害していると主張していた。それに対し、FDAの元職員らを含む被告側は、もし、患者団体の主張が認められれば、現行の審査制度を揺るがせるばかりでなく、製薬企業が臨床試験を行わなくなってしまうと主張していた。

一審の地裁判決は、患者団体の訴えを却下したが、昨年、控訴審(appeals court)で逆転判決が出た。今回の上告審(The full appeals court)では8-2でFDAの主張が認められた。判決文では、この問題は議会の決断に委ねた方がいいかもしれないと述べている。この種の立法処置は、かつて議案として提出されてはいるが、委員会審議以降進捗を見ていない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

日本では、事実上、機構の承認≒保険適応ですから、癌の患者団体が業を煮やして、ドラッグラグを何とかしろって機構を訴えたって考えれば、こういう訴訟が起こることは、我々日本人にはむしろ理解しやすい。

一方、FDAの承認≠民間保険会社の支払カバーという、これまでのステレオタイプの理解にだけ依存していると、米国でこういう訴訟が起こることは理解困難である。FDAの承認審査と保険適応は別個の判断だから、FDAは訴訟の対象にならないだろうし、もし、患者団体がFDAを相手取って訴訟を起こしたとしても、FDAは、お門違いとしらばっくれたり、裁判所が門前払いするはずじゃないかと、我々は考えてしまうわけだ。

でも、実際には、この裁判は地裁から連邦裁判所まで行っている。FDAは受けて立っているし、裁判所も門前払いしていない。となると、日本と同じように、規制当局の承認が、民間保険会社のカバーの可否に大きく影響していると考えざるを得ない。

合衆国では、科学的判断と保健適応が分離されているとは言っても、完全ではなく、特に日本の支払基金よりもずっと金にうるさい合衆国の各保険会社が、自社の保険でのカバー範囲を決めるにあたって、FDAの承認を重大な根拠にしている、そういう事情が、日本ばかりでなく、合衆国にもあるのだろう。

それにしても、FDAの元職員も被告になるんですね。ニュース原文では、former FDA officialsとあるだけなので、reviewerかどうかはわかりません。

FDAでさえもがドラッグラグの元凶として訴えられるのに、そのFDAから2年半もの遅れをとっていながら、いまだに訴えられていないPMDAの職員は、アメリカ人よりもはるかに忍耐強く慈悲深い、国民の皆様に心から感謝しなければならないでしょう。

目次へ戻る