自殺者急増の原因
―報道という名の炎上商法―
20年10月は更に状況が悪化:増加の8割は女性。女性の比率も史上最悪
「放送が人々を動揺させたことは否定しない」と、メイン大学のコミュニケーション学准教授マイケル・ソコロウ(Michael Socolow)氏は述べる。「恐怖をあおらなかったと言うつもりもない。ただ、パニックや恐慌状態を引き起こしたとの報道は、大いなる誇張だと考えている」。「番組の聴取率は微々たるものだった」とソコロウ氏は述べる。「にもかかわらず、新聞が大げさに書き立てた」。その主なねらいは、新興メディアで、放送内容を新聞報道に頼っていたラジオの評判を落とすことにあったと、ソコロウ氏は考えている。(「宇宙戦争」、パニックはなかった? ナショナル ジオグラフィック 2013.10.31)
左の図は、2018年の月別の一日平均自殺者数である(クリックして拡大)。一日に50人~65人(男35~46人,女16~20人)が自殺していることがわかる。あなたはそんなに多かったのかと驚くだろうか。では,「多い」とは何の人数と比べて多いと感じるのだろうか?
●同年の悪性腫瘍による死亡者数:37万3584人=1024人/日(国立がんセンター がん統計)
●同年の交通事故による死亡者数:3532人=9.7人/日(道路の交通に関する統計 / 交通事故死者数について)
●2018-19年の冬のインフルエンザによる死亡者数:3325人=28人/日(*1)
●2019-20年の冬のインフルエンザによる死亡者数:3571人=30人/日(*1)
●COVID-19による死者数(2020年11月15日現在):1882人=6.8人/日(*2)
●2020年10月の自殺者数:2153人(男1302人,女851人)=69人/日(男41人,女27人)
*1 社会実情データ図録より。一日あたりの死者数は11月半ばより3月半ばの4ヶ月=120日間が流行期間とした暫定数
*2 2020年2月13日に第一例が報告されてから11月15日までの277日間の平均
炎上商法の犠牲者
我々の命を脅かす上記の疾患,事故の脅威の程度を,死者数という最も重大で頑健な指標で見ると,最高は悪性腫瘍で,最低のCOVID-19の150倍である。そのCOVID-19は2019-20年の冬のインフルエンザの2割の脅威しかない。なのになぜ未だに多くの人々が,癌よりも,インフルエンザよりもCOVID-19の方を恐れるのだろうか?その理由は,研究に没頭する余り,1年半に及んだ日露戦争の経過も知らなかった科学者[1,2]の立場,あるいは地球人に化けた火星人[3]の立場になってみれば,直ぐにわかる。
1. 長岡半太郎と「日露戦争を知らなかった学者」
2. 理科の教育にもっと広がりを
3.
火星の医学
自分が心血を注いできた研究の論文がNatureにアクセプトされ,意気揚々として臨んだ教授会で,議事そっちのけで連合艦隊がバルチック艦隊を破った話題で持ちきりだったとしたら,あなたはどう思うだろうか?そこまでではなくとも,2020年の冒頭から,研究,論文執筆,研究費申請と,自分の職業人生が懸かった毎日を送っていたら,COVID-19を巡るどんちゃん騒ぎなどこれっぽっちも理解できないはずだし,実際にそうだった人もたくさんいるだろう。
私は30年以上にわたって,テレビジョンの受像器を所有していない。新聞も購読していない。永井荷風が蛇蝎の如く嫌ったラジオも,20年近く前に所有していたラジカセが壊れてから,もっぱらネットで音楽を聴くに留まっている。COVID-19は,そんな自分の環境に感謝する絶好の機会となった。少なくとも私にとって,COVID-19の前も,全ての報道は無駄どころが害悪でしかなかった。そしてCOVID-19は私と同様な思いを抱く人を爆発的に増やす機会となった。
市民がパンと見世物を欲した古代ローマから,炎上商法は報道の宿痾である。古今東西を問わず,「戦い」「武器」のキーワードで,報道の音頭取りにより祭りが始まり,犠牲者が生まれる。犠牲者と言っても,もちろんCOVID-19による死者ではない。季節性インフルエンザによる死亡者数がCOVID-19によるそれより多かったのは,報道によるお祭り騒ぎが原因だったわけではない。そもそも季節性インフルエンザでは報道によるお祭り騒ぎは起きなかった。
季節性インフルエンザで感染者数を毎日報道しなかったことで,誰がどんな損害を蒙ったというのだろうか?毎日の「新型コロナウイルス感染者数」の報道が一体何の役に立ったというのだろうか?その一方で報道は,アビガンをmagic bulletとでっち上げ,ヒポクラテスの誓いを踏みにじる「観察研究」を招いた。自殺者の急増の根底にも報道という名の炎上商法がある。メディアがCOVID-19に関する報道を季節性インフルエンザと同等に抑えていさえすれば,死なずに済んだ犠牲者が既に何百人も出ている。COVID-19に関するこれまでの報道姿勢がそのまま続けば,それが何千人のレベルに達するのに,そんなに長い時間がかかるとは思えない。
→自殺:20年10月は更に状況が悪化:増加の8割は女性。総数に占める女性の割合も史上最悪
→新型コロナ裁判-「スペイン風邪の再来」:でっち上げの原点-
→コロナのデマに飽きた人へ
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