デバイスの欧州中央審査?

あれだけ「個性的な」国々の集まり。しかもユーロを巡って大騒ぎの御時世に中央審査推進?さらに、有効性の審査なんかよりもっと面倒で、もっとお金がかかって、もっと各国事情の影響が大きい、市販後安全性調査体制整備なんて、夢のまた夢という感じがします。

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【ヨーロッパ】欧州では日本と異なる「デバイス問題」, EASD理事長が問題提起
MTpro 2012/10/9
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1210/1210027.html

背景に審査体制の不備
 長らくデバイスラグが問題となっていたわが国では,審査体制の強化と審査期間短縮に取り組んでおり,徐々にその成果が出てきている(関連記事)。それに対して欧州では,近年医療機器の安全性問題が次々と浮上しており,その背景にある審査体制の不備が問題となっている。第48回欧州糖尿病学会(EASD 2012;10月1?5日,ベルリン)では,EASD理事長講演でAndrew J.M.Boulton氏(英マンチェスター大学内科教授)がこの問題を取り上げた他,会期中に開かれたEASDによる記者会見ではデバイスの承認審査および市販後の安全性調査の体制改善は長期的問題となる見通しであることが報告された。

審査機関はEU圏外も含めて70以上,科学的検証の義務付けはなし
 Boulton氏によると,欧州では,昨年来,人工関節置換術や乳房形成術,さらに心血管疾患の植え込みデバイスなどによる不具合のための重篤な合併症が毎週のように報告されている。現時点で糖尿病関連機器による重篤な問題は起きていないが,糖尿病診療では血糖測定機器からインスリンポンプに至るまで,多くの患者がなんらかのデバイスを使用しており,また重症患者では予後に重大な影響を及ぼしかねないことから,EASDは今春に,デバイスの安全性問題を重視する関連学会や機関,デバイス会社らとともに問題点を整理した(Diabetologia
2012; 55: 2295-2297)。
 欧州では,1990年代からデバイスの発売にはConformite Europeene(CE)マークの取得が義務付けられているが,薬剤における欧州医薬品庁(EMA)のような欧州全体の承認審査,および市販後の安全性問題を管轄する機構はない。デバイスの審査は,デバイスのリスクレベルに応じて自己申告制のものと審査機関を経るものに分けられる。企業による自己申告で発売可能なのはカテゴリー?の聴診器や検眼鏡などの低リスクデバイス。それよりもリスクレベルが高い自己血糖測定器(IIa),持続皮下インスリン療法(CSII)のインスリンポンプ(IIb),最も高リスクな植え込み型デバイス(III)は審査機関を経る必要がある。ただ,その審査機関とは「notified body(NB)」と呼ばれる営利機関で70以上も存在する。デバイス企業は1つのNBを選択,NBは審査を進め,企業から審査料を受け取る。EU圏外に立地するNBもあるが,科学的検証の義務付けや審査の統一基準はなく,企業は1つのNBで認可を受ければCEマークを取得できる仕組みとなっているのが実情だ。

EASDは市販後調査を強化する意向も,根本的解決は長期にかかる見込み
 記者会見では,理事長のBoulton氏,デバイス問題に詳しいグラーツ医科大学病院(オーストリア)教授のThomas Pieber氏が,デバイスと薬剤の承認審査を比べて「薬剤と同様かそれ以上に患者の予後に影響を与えるデバイスが,薬剤とは異なり科学的根拠がなく認可されている」と指摘。学会では欧州心臓病学会(ESC)などと共同してEMAに相当する欧州で統一された審査基準と,それを管理する機構の設置を要望している。ただ,審査の厳格化が新たなデバイス開発のインセンティブを下げるという否定的な意見が出るなど,既存のシステムを改善させることは容易ではない。
 9月26日にEuropean Commission(EC)は審査の厳格化を促す声明を出したものの,Boulton氏は「EASDが求めているEU圏内における審査基準の統一や市販後調査が行われる体制,つまり患者にデバイスの安全性を担保できる体制からは程遠い」と批判。Phieber氏も「糖尿病の関連機器でいつ問題が起きてもおかしくない」と懸念を強めている。
 EASDは関連団体とともに適正な基準を2014年までにまとめる意向であるが,その基準の実施にはさらに数年を要すると見込まれる。早期解決が難しい状況下で取りうる具体策として,EASDは市販後調査となる大規模レジストリーの実施を関連企業などと模索している。実現されれば,デバイスの安全問題を学術団体がいち早く察知でき,対策を講じることができる。
 ただし,承認審査と市販後調査はともに機能していなければ根本的な解決にはつながらない。両氏は「市販後調査を強化しても,市場に出るデバイスの有効性と安全性が担保される承認プロセスが実現されなければ根本的な解決は望めない」としている。
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