プロトコール変更:死刑の場合

世界的な死刑廃止の流れの中で、合衆国の法令で定められている3種混合カクテルのうちのチオペンタールの合衆国内での製造中止→輸入しようとした けれども、英国が輸出を禁止して残るはインドのみ。しかし、インド製品の品質では、残酷な方法での死刑を禁じた法令に違反すると、死刑廃止団体か らの指摘もあって、FDAが輸入承認も出せない。3種混合カクテルのプロトコールは法令で定められているため、変更には議会の承認が必要。困った 挙げ句にチオペンタールをペントバルビタールに変更してみたが(これとて法令違反!)、こんな始末になってしまった。うまくいけば、3種混合カク テルのプロトコール変更のための、臨床研究になったはずなのに。
http://www.csg.org/pubs/capitolideas/enews/issue65_4.aspx
この3種混合カクテルというプロトコールは、専門家達の合議によるものではなく、Rather, it was invented by one man in 1977: then Oklahoma chief medical examiner Jay Chapman.とのこと。
http://www.nature.com/news/2011/110127/full/news.2011.53.html
では、合衆国の死刑プロトコール変更にあたって、たとえば安楽死が容認されているオランダに、公認の安楽死プロトコールが定められているかという と、ざっと検索した限りでは見当たりません。さらに下記のように薬局が医師に対して安楽死に使われるような薬を売らないという動きの裏を返せば、 公認の安楽死プロトコールがないことを示唆しています。もしそういうものがあれば、薬局も販売を拒否できないでしょうから。

Some Dutch pharmacists refusing to supply euthanasia drugs
http://www.nationalrighttolifenews.org/news/2014/04/some-dutch-pharmacists-refusing-to-supply-euthanasia-drugs/#.U3foGfl_t0I

ところで、下記の読売新聞の記事によれば死刑制度があるのは32州。上記の2011年1月27日のネイチャーの記事の35州という数字から3つ減 少しています。
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【アメリカ】投薬失敗で死刑囚苦しみ出す…半年間、執行停止
読売新聞 2014年5月16日
http://premium.yomiuri.co.jp/pc/#!/news_20140516-118-OYT1T50121/newstop

 【ロサンゼルス=水野哲也】米オクラホマ州は今月、死刑執行を半年間停止することを決めた。
 新しい薬を使って執行したところ死刑囚が長く苦しんだからだ。死刑に使われる薬はこれまで、欧州の製薬会社から輸入してきたが、死刑廃止論の高 まりを受け、欧州連合(EU)が輸出を禁止したことが背景にある。米国では32州で死刑制度があり、他州にも影響が広がりつつある。
 オクラホマ州で4月29日に執行された死刑は、三つの薬を順番に投与し、意識を失わせた後に心臓を停止させる手順だった。最初の薬の投与から 10分後、医師は死刑囚が意識を失ったことを確認。ところがその数分後、死刑囚が身もだえし、体を起こそうとするなど苦しみ出したため、執行を途 中でやめた。最終的に、死刑囚は執行開始から43分後に心臓発作で死亡した。
 同州では今年1月、死刑囚が執行中に「全身が焼けるようだ」と口にしたこともあった。オハイオ州でも執行に26分かかったケースがあった。
 これらはすべて新しく導入した薬を投与したことで起きた。死刑は州ごとに定められており、ほとんどの州が薬物投与だ。憲法が禁じる「残酷で異常 な刑罰」にあたらないと解釈されているためだ。だが薬を製造してきた欧州の製薬会社が、死刑廃止論が広がる中で薬の製造販売を停止。2011年に はEUが輸出を正式に禁止した。
 その後、各州は在庫で執行を続けたが、在庫が尽きると、同じような効果のある薬で代替するようになった。動物の安楽死に使われている薬もあるな ど、十分な使用実績のない薬を組み合わせているのが実態だ。
 オクラホマ州は今回の事態を受け、地元裁判所の決定により別の死刑囚の執行を11月まで延期した。ミズーリ州では、21日に執行が予定されてい る死刑囚が、血管の疾患のため薬物投与による執行は失敗する可能性があると主張し、14日に執行延期を求めて連邦地裁に提訴した。同州の地元メ ディアは15日、薬物の入手先などの情報公開を求めて州裁判所に提訴した。
 オバマ大統領は死刑制度は否定していないものの、今回の失敗を「深刻な問題だ」と受け止め、米国での死刑適用の実態を調べる考えを表明した。国 連人権高等弁務官事務所やフランスなど国外からも、「死刑の廃止を念頭に、執行を一時停止すべきだ」といった声が上がっている。
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