「ハードエンドポイントが必要なことは理解するが,現実には実行不可能なので,これこれの代用エンドポイントを主要評価項目として検証的試験とすることに同意いただけるか?」
治験相談でよくお目にかかる議題である.規制当局も,おとぎの国に住んでいるわけではないから,降圧剤や「脂質代謝異常改善薬」(って言ったらいいのだろうか?正式な名前はあるのだろうが,調べる気もしない)で,心血管系のハードエンドポイントを国内試験で求めるようなことはない.
では,いつ,どこで,ハードエンドポイントを検証する試験が行われるのだろうか?それを承認条件として付加されることはまずない.そこまで規制当局が父権主義を発揮する必要もない.いつ,どこで,ハードエンドポイントを検証する試験を行うか.そもそも行うのか,棚上げするのか,それは薬を売る人々と買う人々,使う人々の間で議論,交渉すればいい.でないと,いつまでたっても,プロバイダ側の説明責任と,ユーザ側のリテラシーが育たない.
では,もし,ハードエンドポイントを検証する試験が行われて,失敗したとしたら薬は承認取り消しになるのだろうか?脳循環代謝改善剤のようなローカルドラッグを除いて,そういう「前例」はないから,多分市場に留まるのだろう.それも,プロバイダ側の説明責任と,ユーザ側のリテラシーの問題である.
だから,糖尿病のように,8割以上の臨床試験がゴミ同然の指標を主要評価項目にしようとも,多くの薬が次から次へと承認されているのである.本当に患者にとって重要な指標で試験をやるかどうか,やるとしたらいつ,どこで,どのようにやるか.それを決めるのは規制当局でなくてよい.
Gandhi GY et al. Patient-important outcomes in registered diabetes trials.
JAMA. 2008 Jun 4; 299(21): 2543-9.
「現在、登録され進行中の糖尿病RCTのうち、患者にとって重要な転帰を含んでいる試験は18%にすぎない」
何でもかんでも「厚労省がけしからん」という人々は,「厚労省様,御願いですから,もっと仕事をしてください.私はあなた様が頼りです」と,自分たちが厚労省にひれ伏していることに気づけない重篤な認知障害に陥っている.また,どんなに「厚労省がけしからん」と言っても,決して厚労省が変わってこなかったことをすぐ忘れてしまう(もし忘れなかったら馬鹿の一つ覚えみたいに,「厚労省がけしからん」とは繰り返さないはずだ)重篤な記銘力障害も合併している.
そういう人達は,糖尿病臨床試験の8割以上がゴミ同然の指標を主要評価項目であることに気づけない.因果応報である.