報奨金で患者を増やす

製薬企業のお行儀がいい日本では珍しい,露骨な適応外使用プロモーション事例です.公開記事なので,ご興味のある方はそちらの方をご覧ください.この手のプロモーションは米国でしばしば報じられ,(患者の安全を脅かしたという理由ではなく)メディケアに損害を与えたfraud「詐欺事件」として,メディケアの支払基金であるCMS(Centers for Medicare & Medicaid Services)が製薬企業を訴えたという記事を時々目にします.→Program Integrity: Off Label Pharmaceutical Marketing
適応外使用自体は完全に医師の裁量なので,どこぞの国のように,患者の安全を脅かしたという理由で規制当局や企業が責任追及されることはありません.そのあたりを見越しての,当該企業の確信犯的プロモーションと思われますが,それにしても企業だけを悪者にして,その背後にいるであろう,一部のお医者さん達は,またもやお咎めなしなんでしょうかね.
どこぞの国のオンブズパーソンさんも,無駄な裁判にうつつを抜かすより,こういう「悪質事例」を徹底的に糾弾するのが本来の仕事じゃなかったんでしょうか.でも,肝心のネタを業界紙に抜かれるようじゃ,もうおしまいですね.そうなると,日本の支払基金が製薬企業を訴えるなんぞ「前例がありません」から,アレクシオンさんもまずは安泰なのでしょうが,一つ懸念があるとすれば,厚労省はあくまで表向きで,実働部隊は財務省だってことでしょうか.老婆心まで(セクハラワード?).
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アレクシオンのソリリス 不適切プロモーションで適応外使用誘発 死亡例も多数 薬機法68条違反か ミクスオンライン 2018/09/26
 アレクシオンファーマ合同会社の販売するaHUS治療薬・ソリリス(エクリズマブ)で、適応外使用を助長するプロモーション活動を行い、直接的な因果関係は不明であるものの、複数の死亡例が報告されていることが本誌取材で明らかになった。同社は、国内の関係学会が策定した診療ガイドとは異なる「鑑別診断の流れ」を図示した独自のプロモーション資材を作成し、MR(同社の呼称はMCC)を通じて情報提供していた。100万人に2~5人といわれるaHUSに、同社は前年比180%の目標を課し、MRに獲得症例ごとの報奨金も支給していた。医薬品医療機器等法(薬機法)第68条(承認前医薬品の広告の禁止)違反の可能性がある。
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アレクシオン MRにソリリスの処方獲得に応じた報償金 経済活動優先の実態明らかに ミクスオンライン 2018/09/27
 アレクシオンファーマ合同会社のaHUS治療薬・ソリリスのプロモーションにおけるMR(MCCと呼称)に支払われたインセンティブ(報償金)の詳細が本誌取材で明らかになった。2018年下期のMRの評価方法は、新規ソリリス患者に投与されたバイアル数を4割、既存患者に使用されたバイアル数を6割として処方獲得バイアル数を評価するもの。過去には、aHUSと適応外の二次性TMAを「活進TMA」と銘打ち、MRに患者情報を収集させ、その計画達成者の上位にインセンティブを支払う社内コンテストを行っていた。ソリリスの売上目標達成に向け、同社は患者や医薬品適正使用より経済活動を優先したプロモーションに徹していた実態が明らかとなった。(後略)
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