赤レンガに喧嘩を吹っかけた意外な伏兵
『中央省庁の幹部候補600人の人事は、内閣人事局が官房長官のもとで一元管理し、各省庁の局長以上の幹部候補者名簿を作成し、首相や各大臣が協議して決定することになっている。検察という独立性を要求される組織を抱える法務省といえども、逆らうわけにはいかない』(村山治 上川法相が林刑事局長の次官昇格を拒否か、検事総長人事は?法と経済のジャーナル 2018/1/18)
村山 治と言えばロッキード事件当時、朝日の検察回りとして,角栄に手錠をかけた吉永祐介とも昵懇だったジジイです。その村山による「署名記事」ですから、内容は当を得ていると思います。(どうでもいいんですけど,この村山さんの記事の黒川さんの写真,随分と若かりし頃ですね.現在の実物はもっと年相応の風貌なんですが)
この内閣人事局を作ったのが菅義偉(すがよしひで)です。2014年5月のことでした。
小沢一郎のスローガン「政治主導」の標的は「官僚」などという能天気な一般名詞ではありませんでした。中曽根の言うなりになって、自分の師匠である田中角栄を小菅にぶち込んだ検察が、小沢の不倶戴天の敵だったのです。その意味では、菅は、志半ばで斃れた小沢の遺志(オイオイ)を継いだ形になりました。もちろん菅とて、検察の逆襲には十分留意していたでしょう。
でも、上川陽子が伏兵として赤レンガの堪忍袋の緒を切るとまでは読めなかった というのが、特捜のポチ、村山 治による上記の記事の趣旨です。上川は『東大→ハーバード』が御自慢の「国際派」ですから、自分の「レガシー」となる、国際仲裁センターの日本誘致に真っ向から反対する林真琴が許せなかった。(ガラパゴス検察業務しかできない日本の検事は「国際化」が大嫌い)。
「菅氏と上川氏は密室でどういう話をしたのか。その内容は、漏れてこない」などと村山の記事にはふざけたことが書いてありますが、そんなの誰にでもすぐわかることです。
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上川「林を飛ばします」
菅「まあまあ、向こうの考えもあるだろうから・・・」
上川「内閣人事局を作ったお方が、何をおっしゃってるんですか」
菅「検事総長人事はまた特別でねえ・・・」
上川「冗談じゃありません。私に『あんたしかできない汚れ仕事だから、また頼むよ』とおっしゃったのはどこのどなたですか!! 私は粛々と仕事をしましたよ。3人も死刑執行して、検察業務にも大いに協力してきたんです。なのに国際派の私にしかできない国際仲裁センターの誘致を妨害するなんて、林は絶対に許せない!!」
菅「気持ちはわかるが、今はちょっと時期が悪くて・・」
上川「そうですか。では、辞めさせてもらいます。オウムの死刑執行は全て後任の方にお任せします」
菅「ちょっと待って、辞めてくれなんて誰も言っていないから・・・」
上川「『官邸主導』は羊頭狗肉だったんですか?結局は役人の言いなりですか?ここで闘わなければ、完全に足下を見られて、特捜と朝日が組んで、森友を政治案件化しますよ。林を飛ばそうと飛ばすまいと、奴らは必ず仕掛けてきます。現に籠池を人質に取っているじゃありませんか。こうなったら乾坤一擲、勝負に出るしかありません」
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参考までに以下に時系列を整理
16/8/15 黒川弘務官房長が事務次官に昇格
17/12/26 検察庁人事閣議決定(名古屋高検検事長に林真琴・法務省刑事局長)
18/1/17 上川陽子がタイ仲裁センター (THAC)と #クアラルンプール地域仲裁センター (KLRCA)を視察(凱旋視察ですな)
18/3/2 朝日のスクープ(検察による宣戦布告)
18/3/10 朝日のスクープは検察のリークであることが明らかに(検察の了承(黙認)が担保されなければ、この種の記事は絶対に出ません)
【森友学園問題】 誰が朝日新聞に文書をリークしたのか,【森友書き換え】検察のリークか…自民党内「安倍下ろし」本格化
18/3/23 野党議員が籠池に接見(これも検察のOKが出なければこんなことはできない)
注:赤レンガといえば、通常は法務省旧本館の代名詞ですが,検察を話題にする時に「赤レンガ」と言えば、特捜に象徴される現場組に対して、司法官僚として検察庁の王道を着々と歩む法曹資格者集団のことを指します。ちなみに法務省の7局長と事務次官は、私の所属する矯正局を除いて全て検事です。
(文中ほとんど敬称略)
→検察という病