Electric Sense

作成日:2000年2月5日

電気感覚


発電と電気感覚,どちらが古い?

電気魚は発電するための電気器官を持ち, また感度の良い電気受容器を持っています。さて,発電できるようになったので電気 感覚が発達したのか,それとも電気感覚があって,発電できるようになったのか, そこが問題です。卵が先か,ニワトリが先か?


  1. 電気感覚の方が起源は古いらしい

     
    電気感覚とは,体表皮膚に埋没した電気受容器で,周囲の微弱な電流や電場の変化を 検出する感覚です。その情報は脳内の特定の領域に伝えられ,そこで感覚情報の意味 が解析されます。ちょうど,私たちが声や音を聞き,鳥のさえずり,子供の声,ピアノの音など 耳から入った音の周波数と音色を手がかりに,脳の聴覚野でその意味を解析し 判断・認知することと同じです。音の場合は聴覚と呼ばれています。側頭葉に聴覚野があります。 ここに障害を受けると,音は情報として入ってきても,その種類や意味を理解出来ません。つまり脳の特定の場所に, 感覚情報を受けとめる場所がないと,感覚があるとはいえないのです。

     言い換えると,脳内に電気感覚野が存在すれば,その魚は電気感覚を持っている可能性があります。 ブロックら(1982年)は,電気刺激を与えて脳内の電気的応答を記録するという方法で, 電気感覚野の存在を調べました。その結果,電気感覚は系統発生的に起源の古い魚類に 広く分布していただろうということがわかりました。しかもそうした古い起源の魚たちは,発電器官を 持っていません。にもかかわらす電気感覚はあったらしいのです。

     想像をたくましくすると,まず見通しの悪い水の中で,餌となる生き物を知覚するために電気感覚が 発達し,さらにもっと効率よく感度を改良する過程で,電気を発生する方法を獲得してきたのかも知れません。 ちょうど,ヒトは感度の良い耳を持っているので,音声を互いの交信の手段とし,言葉を発明したのかも知れないのと 似ています。遺伝子レベルの解析が進めばやがて明らかになってくることでしょう。

    文献:
    ●Bullock, T.H. et.al.: Evolution of electroreception. Trend in Neuroscience, 5:50-53 (1982)
    ●Bullock, T.H. et.al.: The Phylogenetic Distribution of the electroreception: Evidence for convergent evolution of a primitive Vertebrate sense modality. Brain Research Reviews, 6: 25-46 (1983)


  2. 超高感度の電気感覚


つづく


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