【スーパーワルファリンとは】
ワルファリンは、1920年代の米国中西部で飼育している牛が出血多量によって死亡するスイートクローバー中毒の解析の途中で発見されたジクマロール(dicumarol)をリード物質として開発されました。その作用は、エポキシド型ビタミンKを酸化型ビタミンKに変換するビタミンKエポキシド還元酵素(vitamin K epoxide reductase;VKOR)を阻害することにあります。VKORが阻害されるとビタミンKサイクルが回らなくなり、それにリンクしているγ-カルボキラーゼもその作用を発揮できなくなり、グルタミン酸残基からγ-カルボキシグルタミン酸残基(Gla)への変換がうまくいかなくなります。その結果、ビタミンK依存性凝固因子の産生が阻害され出血傾向を呈します。
医薬品としてヒトへの投与開始以前より、ワルファリンは殺鼠剤として使用され続けています。しかしワルファリンの分解酵素の活性の上昇や、VKORに対するワルファリン感受性の低下によってワルファリン耐性を獲得しているネズミが存在しスーパーラットと呼ばれています。東京都のクマネズミの80%はワルファリン耐性のスーパーラットと言われています。このスーパーラットに対しても有効なワルファリンの誘導体が開発され、この様な薬剤をスーパーワルファリンと呼びます。臨床的にヒトへの投与は行われていませんが、殺鼠剤には使用されています。一般にスーパーワルファリンはVKORに対する阻害定数が低下し、また半減期がワルファリンの2-3日に対して90日以上の物質もあり蓄積毒性が増強されています。このため殺鼠剤誤用などでは通常のワルファリン過剰よりも長期のビタミンK補充が必要になります。
国内ではブロジオロンという物質を含む殺鼠剤が流通しています。