解釈
補正試験の結果の解釈の基本は、1:1の混和で凝固時間が正常化するかどうかということです。しばしば,「上に凸」とか「下に凸」とかいう表現を見ますが、本来の解釈ではこのような方法は用いられず、また国際的にも使用されない判断法です。しかし、「正常化」というのも曖昧な表現であるので、いくつかの解釈法が報告されています。
1. Index of circulating anticoagulant; ICA
ロスナーインデックスとも知られている指数で、補正試験の代表的な解釈法の一つです。式は
Rosner′sindex=APTT1:1mixing−APTTcontrolAPTTpatient×100
ですが、本来、1:1の混合比のサンプルの解析にか使えません。またオリジナルはカオリン凝固時間でのループスアンチコアグラント診断に用いられた値ですので、APTTなどに使用して良いか、後天性血友病などの他のインヒビター診断に用いて良いのかなど、多くの微妙な問題を含んでいます。またカットオフは各施設で設定する必要があります。
2. Mixing test-specific cutoff (MTC)
1:1の混合比のサンプルのAPTTと、正常血漿基準値との差もしくは比の値です。この値を用いたカットオフ値(秒数差; Cut-off values based on clotting times, 秒数比; Cut-off values based on assay ratios)は各施設で設定する必要があります(現実には設定できるほどの症例を経験する施設は少ないと考えられます)。
3. 調和平均指数(Index of harmonic mean; IHM)
「
重み付き調和平均」を用いることで、予測APTTを算出できます。式は
予測APTT=患者血漿比率+正常血漿比率患者血漿比率APTTpatient+正常血漿比率APTTcontrol
です。
この予測APTTに対する実際のAPTTの比を調和平均指数(Index of harmonic mean; IHM)とします。
IHM=実測APTT予測APTT
この指数は上記二つの指数と異なり、1:1以外の混合比でも適応でき、またカットオフ値も同じ1.02を用いることができます。1.02以下では補正が認められると判断し、1.02より高い場合は補正されないと判断します。さらに予測APTTと実測値を同一グラフ内に描くことができ、視覚的にも補正を確認できます(ロスナーインデックスやMTCでは予測曲線を書くことはできません)。さらに混和直後の調和平均指数(IHMi; iは直後;immediatelyです)と混和2時間後の調和平均指数(IHMd; dは遅延;delayedです)の二つの指数の比(調和平均比)を用いることで、インヒビターの阻害用式が時間依存性があるかどうかの検討が可能です。
調和平均比=IHMdIHMi
調和平均比のカットオフ値は1.2で、1.2以下の場合は時間依存性が認められず、1.2より高い場合は時間依存性が認められると判断します。熊本大学では、この調和平均を用いた補正試験の判定をおこなっています。詳細は
文献を参照してください。