2,3-DPGは2,3-Diphospoglycerateの略です。2,3-DPGは2,3-Bisphospoglycerateとも表記されますので2,3-BPGの略が使用されている場合もあります。解糖系の1,3-Diphospoglycerate (1,3-DPG)から時ホスホグリセロムターゼの作用で産生されますが、図を見ていただくとわかるように、この経路を経ると、ATP産生がされません。この意味で、この経路はメインの反応系ではありません。
2,3-DPGの濃度はヘモグロビンに結合すると、その乖離曲線が右に移動します(
ボーア効果)。前述のように2,3-DPGはEmbden-Meyerhof経路のメインの代謝産物ではありませんが、Embden-Meyerhof経路が活性化されている状態では、1,3-DPGの上昇に関連して2,3-DPGも上昇し、乖離曲線が右に移動し「酸素を放しやすい状態」となります。特に酸素不足のためにクエン酸回路(Krebs回路)が十分に働いていない状態では、ピルビン酸の上昇とそれに伴う2,3-DPGの上昇により、より「酸素を放しやすい状態」になると考えられます。
先天性のEmbden-Meyerhof経路の異常症では、その異常部位によって2,3-DPGの値は変動すると考えられ、
ヘキソキナーゼ欠損症では1,3-DPG産生が低下するため2,3-DPGは低下する一方、
ピルベートキナーゼ欠損症では1,3-DPGが蓄積するため、2,3-DPGは上昇します。同じEmbden-Meyerhof経路異常症でも酸素解離曲線の特性が大きく異なります。