血友病B |
先天的に凝固第IX因子が欠損・低下している遺伝性疾患です。第IX因子活性が40%以下の症例を血友病Aとします。因子活性が低いほど出血傾向は強くなります。一般に、因子活性によって重症度を分類しています。
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X染色体連鎖潜性(劣性)遺伝形式を取るため、多くの患者さんは男性です。男性50000人に1名程度の発症すると考えられています(血友病Aの1/5-1/10程度です)。責任遺伝子を持っている女性は、いわゆる「保因者」となりますが、X染色体の不活化(Lyon現象)に偏りが一定程度起こるため、数%の保因者は血友病Bと同じ因子活性を呈し、「女性血友病」となります。
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これらの出血は、重症症例でも中等症症例でも共に認められます。ただしその発生頻度は大きく異なり、このため、治療の目標の一つが重症と中等症を分ける因子活性1%という値をトラフ値として保つことになっています。
軽症血友病ではほとんど出血症状を呈さず、成人になって初めて診断されることも珍しくありません(80歳代で診断された例もあります)
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第IX因子の補充が治療の基本となります。出血時に投与するオンデマンド投与、手術など観血的手技や運動前に前もって投与し因子活性を上昇させておく予備的投与、並びに出血と関係なく一定間隔で投与することで出血そのものを予防する定期投与の3つの治療法に大別されます。これらは併用する場合もあり、定期投与中でも破綻出血を呈した場合はオンデマンド投与を行います。
大手術などでは、持続投与を行い一定以上の因子活性を保つ場合もあります。
製剤は大別して従来製剤と半減期延長製剤の二つに大別されます。
【従来製剤】
半減期が生理的な第IX因子とほぼ同じ製剤です。
ノバクトM
ベネフィクス*
【半減期延長製剤】
遺伝子組み換え技術などにより半減期を延長(およそ2.5倍)させた製剤です。
オルプロリクス
イデルビオン レフィキシア |
病態によって治療目標となる因子活性は異なります。第IX因子は、2相性の血中濃度の変化を示します。一般に体重1kgあたり1単位の第IX因子を投与すると、α相の終盤・β相の始めの時点で0.5 %の因子活性の上昇が期待できます(循環血液量やヘマトクリットなどによって上昇率は異なります)。半減期は平均24時間(半減期延長製剤で60時間)ですが、個人差が大きく、個別に測定する必要があります。
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治療に用いた第IX因子に対する抗体を持つ場合があり、インヒビターと呼ばれます。血友病患者さんにとって、濃縮因子製剤に含まれる凝固因子は異物として認識される場合があり、特に重症血友病患者の治療開始後に認められる場合があります。20-50回目の投与後に認められる場合が多く、特に脳出血など集約的治療を行う場合や炎症反応の合併時に集中して治療を行なった場合などに起こりやすいことが知られています。
軽症や中等症の症例では比較的起こりにくいと考えられているものの、外傷時や手術時、脳出血など致死的出血時に集約的治療(大量の因子製剤使用)を行なった場合などにまれに認められます。特に感染症などの炎症病体合併時には感作されやすいと考えられており、十分な止血管理は必要ではありますが、必要最小限の製剤の使用を行うことが重要です。
インヒビター陽性患者の中には、第IX因子製剤投与によってアナフィラキシーなどのアレルギー反応や、第IX因子とイン非ビターの免疫複合体蓄積によるネフローゼ症候群合併などを起こす場合もあります。インヒビター陽性になりますと治療法が全く異なりますので、必ず専門医の元での治療(最低でも助言のもとでの治療)を行ってください。
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