研究
畳み込みニューラルネットワークの注目部位を制御する方法
ニューラルネットワークが鑑別の際に常に医学的に妥当な部位に注目できているわけではなく,時には間違った
領域に注目していることは知られていましたが,改善する良い方法は見つけられないでいました.そこで,我々
の研究グループは,畳み込みニューラルネットワークの注目部位を医学的に妥当な領域に注目させる簡便な
ネットワーク構造を開発しました.この方法を使うことにより,同じような精度を持つ無数のモデルの中から,
医学的にもっともらしいモデルを構築することができます.
文献
Classification of chest X-ray images by incorporation of medical
domain knowledge into operation branch networks.
Takumasa Tsuji, Yukina Hirata, Kenya Kusunose, Masataka Sata, Shinobu
Kumagai, Kenshiro Shiraishi, Jun'ichi Kotoku
BMC medical imaging 23(1) 62-62 2023年5月9日
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ヒト表皮細胞の品質管理に応用可能な自動細胞トラッキング法の開発
我々のグループは,細胞同士が密に隣り合った表皮細胞に応用可能な新しい自動追跡システムを,個々の細胞の検出段階と,
各々の細胞の追跡段階の2段階からなるアルゴリズムで構築しました.
本研究で用いた深層学習による画像認識と状態空間モデルによる物体追跡アルゴリズムを用いた自動細胞トラッキング法は,様々な細胞種に応用できる汎用性の高い技術です.
iPS細胞を含む多くの幹細胞は,培養系でその状態に相関した運動パターンを示す可能性があることから,
本研究成果は,再生医療に使用される培養ヒト幹細胞の品質管理法として広く応用が期待されます.
プレスリリース
文献
Label‐free quality control and identification of human keratinocyte stem cells by deep learning‐based automated cell tracking
Takuya Hirose, Jun'ichi Kotoku, Fujio Toki, Emi K. Nishimura, Daisuke Nanba
Stem Cells
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深層学習による細胞認識(左) カルマンフィルタによる細胞追跡(右)
医療ビッグデータの因果探索
AI研究は現代社会において様々な分野で応用されていますが、基本的に予測能力の高さを競うものがほとんどで、
予測に用いられるモデルは必ずしも因果関係を反映しているものではなく、相関関係の記述にとどまっていることが大半です。
データから因果関係を自動的に推定する方法は因果探索と呼ばれます。これまで様々な数理モデルが提案されてきましたが、
データの規模が小さいと因果関係の推定精度が悪くなるため、現実の医療データに適用した成功例はこれまで報告されていませんでした。
この度、大阪府保険者協議会および大阪府国民健康保険団体連合会の協力により、
大阪府民60万人規模の健康診断データ(個人を特定できないように加工済み)の提供を得ることができましたので,大阪大学と我々の研究グループは,
これまでにない規模の医療ビッグデータに因果探索のAI技術、特にDirectLiNGAMと呼ばれる数理モデルを用いることで、
健康診断で取得されたデータ間の因果関係の自動的な構築を行いました。
プレスリリース
文献
Causal relations of health indices inferred statistically using the DirectLiNGAM algorithm from big data of Osaka prefecture health checkups
Jun’ichi Kotoku ,Asuka Oyama,Kanako Kitazumi,Hiroshi Toki,Akihiro Haga,Ryohei Yamamoto,Maki Shinzawa,Miyae Yamakawa,Sakiko Fukui,Keiichi Yamamoto,Toshiki Moriyama
PLOS ONE
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健康診断データ項目の因果関係を表したダイアグラム
IR用リアルタイムモンテカルロシミュレーションシステムの開発
インターベンショナルラジオロジー(IR)は,身体中にカテーテルや針などを入れて,
体内の臓器や血管への治療を行う方法です.身体中のカテーテルの動きをモニターするのに,
X線透視などの画像診断装置が使われますが,患者の被ばく線量を,高精度にリアルタイムで表現する手段がないため,
被ばく量が高くなりがちなのが問題でした.我々は,この問題を,リアルタイムモンテカルロシミュレーションの技術を用いて克服することに成功しました.
さらに,このリアルタイムモンテカルロシミュレーションの技術を使えば,
正しく物理計算された放射線の線量分布を仮想空間内でリアルタイムに体感することができます.
我々は,IR体験をできるバーチャルリアリティーシステムの開発に成功しました.
これらの技術を,仮想と現実の融合を実現する複合現実(MR)の技術と組み合わせることで,
実際の患者皮膚面に投影された被ばく線量の情報を術中にリアルタイムに直接目にすることができるシステムを世界で初めて開発しました.
文献
Fast skin dose estimation system for interventional radiology
Takeshi Takata, Jun'ichi Kotoku, Hideyuki Maejima, Shinobu Kumagai, Norikazu Arai, Takenori Kobayashi, Kenshiro Shiraishi, Masayoshi Yamamoto, Hiroshi Kondo, Shigeru Furui.
Journal of Radiation Research 2017;1-7.
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Immersive radiation experience for interventional radiology with virtual reality radiation dose visualization using fast Monte Carlo dose estimation
Takeshi Takata, Hiroshi Kondo, Masayoshi Yamamoto, Kenshiro Shiraishi, Takenori Kobayashi, Shigeru Furui, Takahide Okamoto, Hiroshi Oba, Jun’ichi Kotoku
Interventional Radiology
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Mixed reality visualization of radiation dose for health professionals and patients in interventional radiology
Takeshi Takata, Susumu Nakabayashi, Hiroshi Kondo, Masayoshi Yamamoto, Shigeru Furui, Kenshiro Shiraishi, Takenori Kobayashi, Hiroshi Oba, Takahide Okamoto, Jun'ichi Kotoku
Journal of Medical Systems
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Novel mixed reality dose visualisation system may
help manage radiation exposure during IR procedures
Interventional News
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患者皮膚線量分布
VRによる放射線可視化
MRによる放射線可視化
胸部単純 X 線画像から肺高血圧を人工知能(AI)で検出
肺高血圧症は,肺動脈の血圧が高くなり息切れを生じる疾患です.血圧計で簡単に測ることができる全身の血管と異なり,肺動脈の血圧は侵襲性の高い心臓カテーテル検査でしか測ることができないことから,発見が遅れることが多いことが問題となっていました.
徳島大学と我々の研究グループは,胸部単純X線画像を使って簡便に検査が可能で,専門医と比較しても高い分類精度を達成できるディープニューラルネットワークを開発しました.
徳島大学とのプレスリリース
文献
Deep Learning to Predict Elevated Pulmonary Artery Pressure in Patients with
Suspected Pulmonary Hypertension Using Standard Chest X Ray
Kenya Kusunose,Yukina Hirata, Takumasa Tsuji,Jun’ichi Kotoku,Masataka Sata.
Scientific Reports
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Deep Learning for Detection of Elevated Pulmonary Artery Wedge Pressure using Standard Chest X-Ray
Yukina Hirata, Kenya Kusunose, Takumasa Tsuji, Kohei Fujimori, Jun’ichi Kotoku, Masataka Sata
Canadian Journal of Cardiology
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ディープニューラルネットワークによる解析の流れ
乳房放射線治療後の二次発がんリスクの推定
高エネルギーの光子を照射する放射線治療では,光子や電子が体内で複雑に散乱するため, 照射野外の臓器に対しても放射線による二次発がんのリスクが原理的に存在します. しかし,治療計画の際に使う簡易的な計算モデルでは,照射野内の高線量域の推定は問題なく出来ても, 照射野外の低線量域の正確な推定には力不足でした.我々の研究グループは, 素過程にもとづいたフルモンテカルロシミュレーションを,スーパーコンピュータを用いた大規模シミュレーションとして実行することで, 乳房放射線治療後の全身の被ばくを物理的に正確に計算し, 放射線による二次発がんリスクを推定しました.
文献
Calculating and estimating second cancer risk from breast radiotherapy using Monte Carlo code with internal body scatter for each out-of-field organ
Takeshi Takata, Kenshiro Shiraishi, Shinobu Kumagai, Norikazu Arai, Takenori Kobayashi, Hiroshi Oba, Takahide Okamoto, Jun’ichi Kotoku
Journal of Applied Clinical Medical Physics
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臓器ごとの二次発がんリスク
眼科用ディープニューラルネットワークの開発
眼科用の新しいディープニューラルネットワークを開発することで, 光干渉断層計(OCT)を使って撮影した網膜の断層画像(正常なものと疾患のあるもの)について, 目の疾患をエキスパートの医師を凌ぐ世界最高の精度で分類することに成功しました.
文献
Classification of Optical Coherence Tomography Images using a Capsule Network
Takumasa Tsuji, Yuta Hirose, Kohei Fujimori, Takuya Hirose, Asuka Oyama, Yusuke Saikawa, Tatsuya Mimura, Kenshiro Shiraishi, Takenori Kobayashi, Atsushi Mizota, Jun'ichi Kotoku
BMC Ophthalmology
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ディープニューラルネットワークによる光干渉断層画像分類の流れ
トポロジカル特徴量を用いた医用画像鑑別
トポロジーと呼ばれる数学にもとづいた全く新しい特徴量を使った画像鑑別の方法を提案しました.この手法に基づいた特徴量は,他の特徴量に比べて頑健で,ディープラーニングなどに比べて少ない枚数で高い精度を達成することができます.
文献
Hepatic tumor classification using texture and topology analysis of non-contrast-enhanced three-dimensional T1-weighted MR images with a radiomics approach
Asuka Oyama, Yasuaki Hiraoka, Ippei Obayashi, Yusuke Saikawa, Shigeru Furui, Kenshiro Shiraishi, Shinobu Kumagai, Tatsuya Hayashi, Jun’ichi Kotoku
Scientific reports 9(1) 8764 2019年6月
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トポロジカルデータ解析の基礎と医療応用
古徳純一
Medical Imaging Technology 38巻1号
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低線量SPECT画像のための効果的なノイズ除去フィルターの開発
これまでは,子どもなどの核医学検査を行う場合には,低線量の画像から診断を行うために,統計ノイズが目立つという問題点がありました.我々の研究グループは,この問題に対し,画像の局所的な特徴を反映するように改良したバイラテラルフィルターを開発することで,低線量SPECT画像のノイズ除去に成功し,ノイズに埋もれた集積構造が明瞭になりました.
文献
Denoising projection data with a robust adaptive bilateral filter in low-count SPECT
Susumu Nakabayashi, Takashi Chikamatsu, Takao Okamoto, Tatsuro Kaminaga, Norikazu Arai, Shinobu Kumagai, Kenshiro Shiraishi, Takahide Okamoto, Takenori Kobayashi, Jun’ichi Kotoku
International Journal of Medical Physics, Clinical Engineering and Radiation Oncology
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ノイズ除去によるプロファイルカーブの明瞭化
コーンビームCT画像の高画質化
放射線治療時に患者の位置合わせのため取得するコーンビームCT画像は,最新の臓器の位置情報を持つ反面,撮像原理から画質が悪くなってしまう特性がありました.
我々の研究グループは,コーンビームCT画像を低画質辞書,計画CT画像を高画質辞書と見なして
スパースモデリングに基づく超解像の手法を適用することで,コーンビームCTの画質を,従来にない高画質に向上させることに成功しました.
コンプトンカメラへの応用(早稲田大学片岡研究室との共同研究)はこちら
文献
Image quality improvement in cone-beam CT using super-resolution technique
Asuka Oyama, Shinobu Kumagai, Norikazu Arai, Takeshi Takata, Yusuke Saikawa, Kenshiro Shiraishi,
Takenori Kobayashi, Jun'ichi Kotoku
Journal of Radiation Research
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First application of the super-resolution imaging technique using a Compton camera
S.Sato, J.Kataoka, J.Kotoku, M.Taki, A.Oyama, L.Tagawa, K.Fujieda, F.Nishi, T.Toyoda
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research
Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
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超解像による高画質化
呼吸波形の異常検知
呼吸の状態に合わせた放射線治療を行う場合,患者の呼吸の乱れを検知することは事故を未然に防ぐ上で大変重要です. 呼吸波形の異常を検知するのは,一見簡単に見えますが,呼吸波形は,ベースラインが変動しやすく,通常の閾値処理ではうまく異常を検出することができませんでした. 我々は,呼吸の状態の変化を,特異ベクトルが張る部分空間の歪みとして検出する手法を用いることで,異常を有効に検出することができることを見いだしました.
文献
Automatic Anomaly Detection of Respiratory Motion Based on Singular Spectrum Analysis
Jun'ichi Kotoku, Shinobu Kumagai, Ryouhei Uemura, Susumu Nakabayashi, Takenori Kobayashi.
International Journal of Medical Physics, Clinical Engineering and Radiation Oncology 5(1) 88-95 2016年2月
距離カメラを用いた3次元位置測定システムの開発
放射線治療において,患者の呼吸波形や3次元の位置を,非接触で測ることができれば,常時モニターすることが簡便になり,医療安全を大きく向上させることが可能です. 我々は,市販の安価な距離カメラを用いた,簡便な3次元位置測定システムを開発しました.
文献
Markerless Respiratory Motion Tracking Using Single Depth Camera
Shinobu Kumagai, Ryohei Uemura, Toru Ishibashi, Susumu Nakabayashi, Norikazu Arai, Takenori Kobayashi, Jun'ichi Kotoku.
Open Journal of Medical Imaging 6(1) 20-31 2016年3月