埼玉医科大学医学部 ゲノム応用医学 研究プロジェクト紹介

遺伝子治療・ゲノム編集プロジェクト

 ヒトゲノム全塩基配列が決定され、数多くの病因遺伝子が同定されるに伴い、ゲノム情報を利用した治療戦略の1つとして「遺伝子治療」が注目されるようになりました。さらに近年、染色体を自由に操作する「ゲノム編集」技術が開発され、 遺伝子治療への応用が期待されています。私達は、アデノウイルスベクター上から全てのウイルス遺伝子を除いた、ヘルパー依存型アデノウイルスベクターを開発し、 このベクターが単なる遺伝子導入だけでなくゲノム編集にも優れたベクターである事を示してきました。これらのベクター系を遺伝子治療と再生医療に広く応用するための基礎研究を行っています。

がん研究プロジェクト

 臨床部門・機関との共同研究にて、倫理基準を満たす臨床がん組織から細胞を分離し患者由来がん3次元培養系を確立し、 これを免疫不全マウスへ移植して腫瘍モデルを構築し、これら実臨床に近似したがんモデルにおいて、がん病態メカニズムの解明、新規予防・診断・治療法の開発を進めています。 乳がん・前立腺がん等のホルモン依存性がんでは性ホルモン感受性の有無が診断・治療において重要であり、感受性がんに対しては内分泌療法が行われています。 しかし、内分泌治療抵抗性が獲得されると再発・転移に至るため、治療抵抗性の克服は臨床上の課題です。 私たちは、ホルモン依存性がんのホルモン作用を解明するため、次世代シーケンス解析と全ゲノム情報を組み合わせ、性ホルモン受容体を介する転写調節機能とホルモン標的遺伝子の同定・機能解析を行い、 性ホルモン作用の分子メカニズムと遺伝子制御ネットワークの解明を目指しています. 私たちが同定したエストロゲン標的遺伝子のうち、TRIM25/Efpは細胞周期チェックポイント等の標的蛋白質を分解するユビキチンリガーゼとして機能し、乳がん増殖をもたらします。 現在、性ホルモン受容体シグナルと関連する非コードRNAとRNA結合蛋白質の解析に注力しており、これら因子を介するエピゲノム制御によるがん病態ならびに治療抵抗性獲得メカニズムの解明を進めています。

筋骨格・代謝研究プロジェクト

 エストロゲンとアンドロゲンは、それぞれ女性および男性の生殖系の発達・機能調節に重要であるとともに,骨粗鬆症・サルコペニアなどのロコモティブ症候群、乳がんや前立腺がんなどのホルモン依存性がんを始めとした様々な疾患に深く関与する性ホルモンです.ホルモン減少・欠乏症は、更年期障害のみならず、代謝や免疫系等の多彩な組織における機能変化にもつながります。 エストロゲン標的遺伝子としてCOX7RPはミトコンドリア酸素呼吸に関わる呼吸鎖複合体間で構成される「超複合体」の形成促進因子であることを世界に先駆けて発表し、COX7RPを過剰に発現するマウスはマラソンランナー型の運動持久力を持つことを明らかにしました。 さらにCOX7RPはホルモン依存性の乳がん・子宮体がんにおけるエネルギー産生を高め、特に低酸素状態においても、グルタミンを基質にATP産生し、がん増殖に結び付くメカニズムを世界に先駆けて発表しました。 現在、ミトコンドリア超複合体と健康長寿・老化の関係について機能解析を進めています。


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