奎章閣
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 奎章閣は李氏朝鮮時代の宮廷蔵書を保管・公開・研究する機関。ソウル国立大学の所管で、メインのKwanak(冠岳)キャンパス内にある。下写真左は前方から、は後方から久々に晴れた03年3月3日に撮影した。

 奎章閣の前身はソウル市内にある景福宮に正祖が1776年に建てた李王家蔵書閣で、公文書保管所・図書館・学問所としての機関だった。下写真左は奎章閣の入り口。は入った1階ホールの中央で、かつて景福宮にあった様子が後方の絵図と手前の模型(写真でテーブル状のもの)で示されている。
 このホールの左右に所藏貴重文献・文書の展示室があり、入場無料。週に1回ほどだが中高生の団体が来ると騒々しいが、普段はとても静か。目の覚めるような豪華な大本ですばらしい印刷の各種朝鮮版、日本との領土問題や名称問題がからむ古地図等も見ることができる。
 いうまでもなく韓国は日本の侵略で1910年に植民地とされ、日本敗戦まで35年間を朝鮮総督府に統治された。この間、李王家の蔵書閣は朝鮮総督府の所管、また大正13年(1924)に京城帝国大学(かつては市内の大学路にあり、現在は医学部のみが残る)が設立されると付属の奎章閣が設置され、解放後にソウル国立大学に移転された。その経緯は、日々調査している蔵書に捺される「帝室圖書之章」「朝鮮総督府圖書之印」「京城帝國大學圖書章」「ソウル(ハングル文字)大學校圖書」の印記から如実に分かる。
 上写真左は1階ホールに掲げられる朝鮮王朝の歴史銘板。上右は2階にある閲覧室。ここは私の知る限り最も開放された古文献の公的所蔵機関で、紹介状、パスポート等の身分証明書提示、閲覧カード作製等を一切要求しない。むろん閲覧費なども不要。ここの研究員と私が友人というからではなく、日々訪れる家譜調査の人たちも同様に利用している。なお上右写真の天井から下がる黒い札には「静粛」とあるが、高談する家譜調査のオヂサンたちには閉口する。それを館員が一切注意しないのも不思議。
 ちなみに朝鮮文献の多くはマイクロフィルム化されており、上右写真の左奥にあるリーダープリンターで閲覧やプリント(1枚100won)するか、その焼き付け製本で調査する。マイクロ化されていない書だけ原本を出してくれ、これが他国の機関と違う。中国書の見事な17世紀初期朝鮮版の原本がホイと出て来るのに、朝鮮著述の19世紀後期朝鮮写本が不鮮明なマイクロでしか見られないのは残念だが、致し方ないことだろう。