ソウルの韓薬店(2003年3月1日撮影)
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 土曜日のヒマな日だったので、宿舎からNakSongDae(落星岱)駅の下町まで下り、庶民街の裏通りを地下鉄2号線のSadang駅方向に、酒などの買い物目当てに歩いてみた。すると程なくして予感通り市場街があり、その一角に下写真の東醫保身院という立派な看板の比較的大きな薬店(?)がある。店前に多数の生薬を丸ごと展示し、写真奥のようになぜか水槽もあって、見知らぬ魚がうねっていた。これは写真に撮らねばとカメラを向けると、中から店の奥さんらしき人が出てきて何か話しかける。手を振ってJust take a pictureなどと答えたが、「何この変なオヤジ!」という彼女の表情がよく写っている。

 ちなみに「東医」とは李氏朝鮮時代から使用された韓半島の医学・医師を指す語彙。17世紀初の許浚『東医宝鑑』は韓医学のバイブルされる。しかし東医は中国の東という意味で中国が使用した呼称からの転用で、高麗時代は自らの医薬を主に郷医・郷薬と呼んでいた。

 さてこの店は大きく二つに分かれ、下写真左側が普通の薬店で、奥に主人がいて客の病気相談にのっている。店内には人参や鹿茸の高貴薬および丸剤・薬茶が展示され、店内には薬を煎じるニオイが充満していた。というのも店の右半分は煎薬室で、独特な丸い形態の煎薬釜が並び、これで客に処方した薬の一定日数分を煎じるらしい。いま持病の憩室炎が出かかっているが、ひどくなったら大黄牡丹皮湯を煎じてもらおう。

 店前には各種全形生薬が下写真右のように並べられる。手前の袋に霊芝、青いかごに桂皮、ピンクの箱に大棗があり、いずれも中級品だった。このような韓薬店はあちこちにあり、ここの店構えは見た中で立派なほうだったが、客はどこも少ない。こうした店以外に普通の薬局(風)にも生薬製剤が置いてあるが、それぞれがどういう公的・法的名称と立場なのかはまだ不明。一方、韓医院もいくつか見かけたが、○○韓医院の看板があるだけで、外から写真を撮っても絵にならない。ただ患者の出入りは多いようで、繁盛している様子が窺えた。