台湾には「自助餐」という、日本にはないユニークな形式の弁当屋兼食堂がどこにでもある。中国大陸でも私は見かけたことがない。この自助餐を訳せばセルフサービス食堂となろうが、カフェテリアや日本の大衆食堂のように、一品一品が皿に盛られて値段がついているのとは違う。またセルフサービスした結果は「ホカ弁」と同じになり、左下写真のように店の内や外に食べる席もあるが、その過程と料金計算がホカ弁やカフェテリアとは相当に違う。
つぎに写真上右や下左右のように各種並んだオカズを、好きな種類を好きな量だけ、自分勝手に容器に盛りつける。ちなみに上下の写真は撮影角度を変えただけで、みな同じ店の同じオカズ台。だいたい30種前後はあるので、本当に目移りする。通いつめてみると毎日のメニューは大差ないが、店が違うとメニュー・味付けもいささか違う。ただしどの店内にもタダのスープ(まーまーの味)があるのは同じ。
この計算はほとんど神業といっていい。その勘定に私は疑問を感じたことがなかったし、文句をつけている客を見たこともない。要するに安いのだが、勘定は5元単位くらいでスッキリしている。ちなみに各オカズに値段、たとえば100gいくらとか、1匙いくらなどを書いてあるのも見たことがない。
台北留学中の大平君という、かつての私の学生とも話したことがあった。日本ならこんなアバウトな勘定に文句をつける細かい人間が多くて、この方式は成り立たないだろう、などと。たぶん日本以外の国でも。ベトナムでもやや似た形式の平民食堂というのに通いつめたが、どこでも客ごとに注文品をノートにつけて細かく勘定していた。
でメニューだが、上段左から空心菜炒め、中央はご存じ台湾定番のメンマ風竹の子煮、右は皮つき豚バラのトロトロ醤油煮、下段左はナスの醤油炒め、右はキャベツ・ニンジン・豚肉の塩味炒め。この計5品70元=約250円と台湾紹興酒で、今晩も私の心豊かなひとときが過ぎてゆくのだった。