ドーンとほぼ原寸大で出したが、「酒と薔薇の日々」ならぬ酒とタバコ・西瓜・薬という、不可思議な日々を実証する風景。背景はカビでやや薄汚れた冷蔵庫の上で、いっそうの生活臭を醸し出している。もはや「薔薇」はめでるしかなくなった歳だし、相当に現実感のこもった取り合わせと言っていいだろう。
中心にある酒は台湾産「花彫」紹興酒。付近のスーパーで200元したが、台湾の紹興酒では2番目に高い。1番は「精醸陳年」紹興酒で250元ほどするが、この2種は文句なく身も心もトロける。ただ台湾の酒は大陸とも日本とも違う独自の世界があり、蘊蓄すると長くなるので別の機会に譲りたい。
さて左は見て分かる黄色い西瓜だが、和語のスイカって、もしかしたら「水瓜」か「水果」の音読なんだろうか? それはさておき、黄色い西瓜は見知っていたが、少々高いし、食べたいとも思わず、これまで一度も賞味したことがなかった。2日前に近所のスーパーで2個なら87元、1個なら49元で売っており、のどが渇いた時にと1個買ったら黄色だった。ご覧のとおり小さいが、そこそこの甘みと、赤い西瓜とは微妙に違う味わいがある。故宮図書館の呉女史のご教示によると日本品種で、日本同様に小玉の名だそうだ。これをうんと冷やして食べたところ酒の後、とりわけ朝の口渇に格別いい。で、明日の朝にはなくなってしまう。今度は赤いのを買ってみる。
右は書いてあるとおり、小柴胡湯の台湾製エキス顆粒。宿舎から歩いて10分ほどにある平安堂という店で、四百数十元だった。そこは按摩治療院と中薬店を兼ねたところだが、頚椎症に去年なったばかりの時、寝違えと勘違いし治療してもらったことがある。肘でゴリゴリする按摩のため、痛さのあまり思わず呻いたが、隣のベッドの小学生は本当に涙を流して泣いていた。今回は遠慮して薬だけを買いに行ったところ、妙齢の店主がまだ顔を覚えていてくれたのには恐縮するばかり。
なおこれらエキス顆粒は200g入り(大体30日分)で、台中にある順天堂薬廠の製品。どこの中医医院・薬店(薬行・薬房・薬局があり、まだ区別不明)でも置いてあり、一番普及しているようだ。ただ去年もそうだったが、薬店で「このエキス剤を」と求めると、ホイと売ってくれる。日本みたいに「素人判断はだめですよ!それであなたの症状は?」、なんてうるさいことは一度も言われたことがない。これは私にとって実にいい。しかし当小柴胡湯エキスの効能記載はさすがで、「治傷寒少陽症之往来寒熱、胸脇苦満、心煩喜嘔、口苦、目眩、咽乾、黙黙不欲飲食」という『傷寒論』どおりの記載。しかもゴシック文字の注意事項には、「極く少数の病人には間質性肺炎等々を引き起こす可能性がある」としっかり明記してある。
というわけで私は安心して、酒と薔薇ならぬ研究と煙酒(中国発音で研と煙〔タバコ〕、究と酒は同音・同アクセント)の日々を送っている。なお、写真のタバコとライターは物差しのつもりで、とりたてて他意はない。