2.ゲノムワイド関連解析Genome Wide Association Study

2003年のヒトゲノム配列の解読によって、我々の身体を作る設計図の全貌が明らかになった。しかし、30億塩基からなる膨大な遺伝暗号がどのような意味を持っているかについては、これから解析を進めていく必要がある。ゲノムの塩基配列は個人間で殆ど同じであるが、数百箇所に一箇所異なる部分があることが分かっている。我々はこの個人間の遺伝暗号の違いが様々な病気のなりやすさや薬の効果の違いに関わっていると考え、これまで解析を進めてきた。我々のグループはゲノム上に1000万箇所程度あるとされる一塩基多型(SNP/スニップ:Single Nucleotide Polymorphism)に注目し、数十万箇所以上のSNPを網羅的に解析する「ゲノムワイド関連解析(GWAS/ジーワス:Genome Wide Association Study)」を世界で初めて行った8, 9。これらの解析では、まず患者群-非患者群など比較対象となる患者さんから血液を集め、DNAを精製する。このDNAを用いて通常50万ヶ所以上のSNPの遺伝子型を決定し、2群間で遺伝子型の頻度が異なるSNPを明らかにするというものである(図3)。この解析手法により、癌や肝疾患に関連する遺伝子をこれまで明らかとしてきた10-13。このような遺伝因子を同定することにより、疾患発症のメカニズムの解明につながるだけでなく、病気の予防や患者さんのリスクに応じた適切な治療方法の選択が可能となり、さらには新規の治療法開発につながると期待できる。

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