2−1.食道癌のGWAS
食道癌は世界全体で癌による死亡原因の第6位をしめ、特に中国などアジア地域に頻度が高いのが特徴である。食道癌の発症に関わる遺伝因子を明らかにするために、食道癌患者188名と健常者934名について55万ヶ所のSNPを調べ、両群での頻度の違いを検討した。差が大きかった上位の12,000SNPについて、別のサンプルで再検討した結果(図4)、食道癌の発症と非常に強く関連する遺伝子領域が2ヶ所同定された14。今回発見したSNPはどちらもアルコールの分解に関わる酵素の遺伝子上に位置していた。アルコールはアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに分解され、さらにアセトアルデヒド脱水素酵素によって酢酸に分解されるが、SNPの違いによりこの両酵素のアミノ酸配列が変わり、酵素活性が大幅に変化することがわかった(図5)。