終戦後を予想する
ミラノ−東京−ニュルンベルク


 一九四三年七月に、反ファシスト勢力が結集して、国王のヴィットーリオ・エマヌエーレ三世が主導して、ムッソリーニを20年にわたる独裁者の地位から引きずり下ろしました。そして、首相に指名されたピエトロ・バドリオ将軍は水面下で連合国と休戦交渉を進めます。その後、監禁されていたムッソリーニをドイツの武装親衛隊が救い出して、北イタリアに傀儡政権「イタリア社会共和国」を建て、内戦状態になります。最終的にドイツ軍はイタリア領土内から追い出され、ムッソリーニはパルチザンに捕らえられて、裁判抜きで処刑され、その死体はミラノの広場に逆さ吊りにされました。イタリア王国軍とパルチザンがムッソリーニのファシスト政権に引導を渡し、ドイツ軍を敗走させた。ですから、イタリアは法理的には戦勝国なんです。でも、たぶん「イタリアは戦勝国だ」と思っている日本人はほとんどいない。自分たちと同じ敗戦国だと思っている。

 たしかに、戦後イタリアを描いた『自転車泥棒』(ヴィットリオ・デ・シーカ監督、1948年)のような映画を観ると、街は爆撃でひどいことになっているし、人々は食べるものも仕事もなくて、痩せこけている。「ああ、イタリアも日本と同じだ」と思っても不思議はない。でも、違います。イタリアは戦勝国なんです。だいたい、イタリアは一九四五年七月十五日には日本に宣戦布告しているんです。(内田樹の研究室 比較敗戦論のために 2019-03-20 mercredi より抜粋)

欧州の多くの国におけるコロナワクチンファシズムは苛烈なものでした。特に私の住むイタリアではコロナワクチン接種は義務化され、2022年初頭からは50歳以上の労働者はコロナワクチンを3回接種済みでない場合には職場にも入ることが許されなくなりました。そして当時の予定ではその規制が2022年6月半ばまで続くものであり、さらにその先は全く不透明という状況でした。まさにコロナワクチンを受け入れるか、生活の糧を奪われるかの二択をもって政府から脅迫されているようなものでした。(中略)

ところが2022年3月末、突如としてコロナワクチン義務化の規制は解除されました。その頃イタリアではむしろコロナ感染者数自体は増えていましたので、つまりはコロナワクチン接種にも、強硬な義務化やその解除にも科学的、理性的な理由など存在しなかったということです。(中略)

2022年11月現在、街を歩くとアジア人や高齢者の中にはまだマスクを着用している方を見かけることもありますが、それでもマスク着用者の法が圧倒的に少数派になっています。近頃はコロナワクチンもほとんど話題にも上りません。コロナワクチンファシズムは非常に苛烈なものでしたが、熱が冷めるのもあっという間でした。ほとんどの人達はあのような騒動があったことをすっかり忘れてしまったように見えます。(荒川 央 コロナワクチンが危険な理由2 花伝社 あとがき より抜粋)

イタリア国民は自国で生まれた本家ファシズムもワクチンファシズムも自分たちの手で終わらせた。本家ファシズムの主謀者は裁判無しで処刑され逆さづりになった。翻って2023年2月現在、我が国ではワクチンファシズムの息の根は止まっていない。ワクチンファシズムの主謀者は誰か、裁判はどうなるかなどという議論もない。

ではこれから一体どうなるのだろうか?ワクチンファシズムの息の根が止まっていない以上、誰も確かな根拠を以て予想できない。ただ一つ確かなことは、イタリアは絶対お手本にならないということだ。何しろ向こうは自分たちでさっさとけりをつけたのだから。

もし参考になるとしたら、往時の我が国自身及びもう一つのファシズム同盟国における戦犯捜しと裁判以外にはないであろう。

ニュルンベルク2.0
負けます。確実に。
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