陰謀史観2

(”朝ご飯を食べて成績アップ!”を話題に、ある記者さんとのやりとりから)

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(私)
この手の子供だましは他でも話題になっています。このページの掲示板の書き込みを懐かしく思い出しました。

”この統計は遠い昔ケロッグ社が、自社のコーンフレークを売るために流した、いわば都市伝説とも言える風評です。アホな母親が盲信し、ケロッグは大変な数売れたそうです。”

↑日本でも宣伝していました。私が小学生の頃です。

「白米の御飯には脳に必要なビタミンが含まれていないから、白米ばかり食べていると馬鹿になる。パンやコーンフレークを食べましょう。そんなものはアメリカの陰謀であるとして、どうしても米にこだわる心情右翼の人には、玄米や小麦胚芽入りの白米という選択肢もあります。」そういうまことしやかな風評が全国に流布していた、のどかな時代でした。
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(記者)
上記の議論、程度の違いこそありますが、現在の放射線問題を彷彿とさせます。
どうして皆、陰謀論が好きなのでしょうか…。
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(私)
国民の皆様が、権力者の陰謀が大好きなのは、「見世物」を求めているからです。→水戸黄門サイクル

コーンフレークの場合には、食べ物がそのまま見世物になるので、古代ローマならずとも、「一石二鳥」というわけです。見世物の魅力は考えずに済む点です。スポーツの試合では、選手は考えなくてはなりませんが、観客は考えずに済みます。もし、観客も考えることを強制されたら、誰も見に来てくれません。国会中継なんかも同様です。

秦 郁彦の「陰謀史観」(新潮新書)を読むと、著者の地道な検証態度の対照として、いわゆる「論客」と言われている人達の、陰謀物語創作に賭ける情熱がひしひしと伝わってきます。彼らには、極力一次資料に近い資料を見つけ出して仮説検証しようという態度のかけらも見られません。

陰謀史家達は、出発点から、自分に迎合してしまって、自分を客観視できていません。ですから、自分の頭の中に生じた疑問に対する作業仮説を検証し、検証過程を記録して文書に残そうとしない。→ましてや、その文書を発表して自分を吟味してもらおう、批判してもらおう、そして一層成長していこうとは絶対に思わないのです。

これは何も陰謀史家達に限ったことではありません。誰にでも多かれ少なかれ、そういう傾向はあります。ただ、教えてもらって助けてもらって育ててもらう習慣を身につけて成長していく喜びを知れば、陰謀論愛好から脱出することができます。

自らの見立てを検証する作業を毎日繰り返している臨床医は、陰謀論を嫌ってもいいはずなのですが、自分の「専門外」になってしまうと、「ドラッグ・ラグは厚労省の陰謀」信仰に凝り固まってしまう人が相変わらず多いようです。
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陰謀史観

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