第2波は弱毒化のエビデンス―5第2波なんてどこにある?
-今こそスウェーデンに学ぶ-

左の図(クリックして拡大)は,日本とスウェーデンにおける,2020年2月半ばから同年7月末までのPCR検査陽性者数(*以下陽性者数)と死亡者数の経過表である.御覧の通り日本では,本日7月31日現在,いわゆる「第2波」を巡ってのどんちゃん騒ぎがまだ続いている.

同じ事が起こっているのに市民の反応は大違い
少しのことにも、先達はあらまほしき事なり.まして況んやコロナにおいてをや.では,既に第2波が終了しているスウェーデンはどうだったのだろうか?結論は簡単「第2波だって?そんなもんはなかったよ」【新型コロナ】スウェーデンに第二波は無し | 最新の集団免疫状況).この動画のうぷ主(アップロードした人の意)さんも,動画のアップロードを7月始めから3週間もお休みしていたそうで,その理由はコロナ騒ぎも終了してしまったから.「みなさん,コロナどころじゃない.短い夏を存分に楽しまなくては」という雰囲気なのだそうだ.6月始めからの検査陽性者数の増加についても触れているが,これも「6月始めからの検査陽性者数の増加は,死者数が着実に減ってきても決して油断せずに検査数をどんどん増やしていったからであって,結局第2波は来なかった」とあっさり片付けている.

おわかりだろう.「検査陽性者数はあくまで代用エンドポイント(こども銀行券)に過ぎず,真のエンドポイント(日本銀行券)である死者数の経過で第2波を判断する」(*)という常識が一般市民の間まで隅々に行き渡っているから,どんなに検査陽性者数が増えようとも,スウェーデンの市民はびくともしなかった.これが本当の「民度」である.翻って我が国では,高名な学者先生方が,やれ死者が82万人になる,いや,10万人ぐらいで済むだろう などと能天気なデマをまき散らす始末.(こども銀行券と日本銀行券の喩えについては→患者数を偽造する-「感染者数」という名のデマを参照のこと)

第1波・第2波の谷間はどうしてできる?
スウェーデンと日本やスペイン(右図.クリックして拡大)の大きな違いは,検査陽性者数が形成する第1波と「なんちゃって第2波」の間の谷の有無である.これは強毒株による第1波の山が下る裾野と,弱毒株によるなんちゃって第2波の立ち上がりの重なりの有無で説明できる.スウェーデンの場合には,行動制限が最小限だったため,集団免疫が短期間で進んだ結果,強毒株による第1波による下りと弱毒株によるなんちゃって第2波が重なったため,谷間が形成されなかった.一方,日本やスペインでは,スウェーデンよりも強い行動制限により,集団免疫の進み方が遅かったため,第1波の減弱となんちゃって第2波の間に,広い谷間が形成された.そう考えれば,各国における第1波と第2波の関係がうまく説明できる.

スウェーデンに学べないのは欧米諸国も同じ
強毒株から弱毒株への交代が起こる理由や,検査陽性者の再増加の有無がなぜ生じるかについては,「第2波は弱毒化のエビデンス―1」で詳しく説明したので,そちらを御覧戴きたい.それよりも,今,最も注目すべきは,目の前に厳然と存在する事実・データ=第2波なんてどこにある? を認めようとしない,否認症である.この否認症が,日本人特有の障害かというと,そうではない.実際に日本とほぼ同様の「なんちゃって第2波」の経過を辿っているスペインでも(右の図 クリックして拡大 第2波は弱毒化のエビデンス―4も参照のこと),また,それより遙かに小さな検査陽性者数の増加に留まっているドイツ,フランスでも,日本よりももっと強度の規制を再開する動きがある((スペイン、フランス、ドイツに感染第2波? 非常事態解除が仇 ニューズウィーク日本版 2020年7月28日第2波は弱毒化のエビデンス―4でも紹介).これらの国でも同じ欧州大陸にあるスウェーデンから何も学んでいないのだから恐れ入る.EUを離脱した英国も大陸諸国と同様に,第1波を切り抜けた看護師までが,なんちゃって第2波に怯えている(「第2波必ず来る」医療従事者が恐れる英国の今).

    そんな学習障害は大西洋を越えてアメリカ合衆国にも蔓延している.かつての栄光はどこへやら,今はクロロキンゲートを追求する覇気もないThe New York Timesに掲載された記事は,あたかもスウェーデンが「経済を優先し健康を犠牲にした」かのような,的外れな非難をするだけで,COVID-19への対抗策を如何に策定し,どんなアウトカムを得たのか,そしてそこから何を学ぶのかという,最も重要な問いについて,一切考察していない.今起こっているのは,季節性コロナ感染症でさえない.PCR検査のハイパーインフレーションが引き起こした,「無症状病原体保有者パンデミック」=「なんちゃって第2波恐怖症パンデミック」である.そして上記の記事は,ニューヨークタイムズもまた,この自らが創り出したインフォデミックという名の人災の中に埋没してしまったことを表している.

今後の展望
こんなところを読んでいる物好きなあなたは,SARS-COV-2が用意してくれた地球規模の悲喜劇を展望する特等席を確保したことになる.あとはどこの誰が何を考え,どう発言し,行動するかを見物するだけだ.現状を踏まえると,スウェーデンに学べるような人材がこれからどんどん増えるとは思えない.当面,客席のsocial distancingは維持され,あなたの希少価値も安泰というわけだ.だから,続報は私に任せ,安心して本来の仕事に集中し,大本営2020の崩壊と東京裁判2020/21に備えるがいい.

患者数を偽造する-「感染者数」という名のデマ
第2波は弱毒化のエビデンス―1
第2波は弱毒化のエビデンス―2
第2波は弱毒化のエビデンス―3
第2波は弱毒化のエビデンス―4
コロナのデマに飽きた人へ
表紙へ