COVID-19感染の対応に関する本学会員からの情報



森山記念病院 山田正三先生

ご存知のように現在不急の手術は延期することが各外科学会から提案、推奨されています。 ただし準急患(1ヶ月以内の早期の手術が望ましい患者)や急患(下垂体卒中など)の際にはやはり手術が必要となります。 現在まずは問診、全身状態、採血検査や胸部CT検査が重要で、それが問題なく、また直前(48時間前)のPCR検査が陰性であれば通常の個人防護具(PPE)で十分とされています。 今後は更に改善されると思いますが、現在感染症特定病院やその協力病院以外の病院では残念ながら保険適応によるPCR検査が認められていないのが現状です。また救急患者の場合にはPCRの結果を待って手術を行う時間的余裕がありません。 このような場合の手術では医療者の安全を確保するためにfull PPEが必要とされています(Full-PPE:鼻腔・口腔保護としての FFP2(N95)マスクあるいは電動ファン付き呼吸用保護具(Powered Air- Purifying Respirator : PAPR)、眼球保護としてのフェイスシールド±ゴーグル、身体の保護として の不浸透性長袖ガウンと、皮膚の露出の少ない手術用帽子を装着して臨む)。しかし長時間の手術にN95を付けて臨むことは一般に身体的に困難です。そこで我々は海外でも推奨されている電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)をつけて現在手術を行なっています。ほとんどの外科医がPAPR使用下の手術の経験がないと思われますので、その経験を皆さんと共有したく情報を発信させていただきます。 

1)我々が購入したのは3Mのウイルス対応型のLoose typeのPAPRです(1セット:35万円)。
医療安全上はマスクも不要だそうですが、個人持ちではなく不特定多数の人が使用しますので(その都度アルコール消毒は必要ですが)やはりマスクを着用の上、使用したほうがお互いに良いと思います。またfull PPEという観点からは皮膚の露出をできるだけ少なくする意味で帽子も頭巾型のものが良いかと思います。

2)このPAPRですがバッテリーは8時間持ちます。従って通常の下垂体手術では問題はありません(充電時間は90分)。今回このマスクを使用するまでは、これを使用して手術に耐える視野が得られるのかがとっても心配でしたが、全く問題を感じたことはありません。また絶えず空気が入ってくるので視界が曇ることも全くありません。ファンの音がうるさいのではとの心配もありましたが、この点も全く問題ありません。強いて言えばバッテリー をつけたベルトを腰に巻くため長時間だと腰痛をきたすことがあります。この場合にはすこし座って手術を続行すれば問題はありません。ただし乾いた空気が絶えず送られてきますので、いつもより目の乾燥が起きやすいように感じており、時々意識して瞬きをするようにしています。

このタイプのPAPRは現在在庫が日本にはないようですが、もっとhigh specの機種は在庫がまだ十分にあるそうです。また3M以外でも発売しているようですので調べていただければ幸いです。
以上PAPRの使用経験を個人の経験ですが発信いたします。