会長挨拶
第43回日本頭蓋顎顔面外科学会学術集会
会長 宮脇 剛司
(東京慈恵会医科大学形成外科学講座 教授)

頭蓋顎顔面外科は東京慈恵会医科大学形成外科学講座の大きな柱の一つであり、過去には丸毛英二教授、児島忠雄教授、栗原邦弘教授が本学会を開催し、今回が4回目となります。歴史と伝統のある本学会を主催させていただけることは大変光栄であり、会員の諸先生に心より感謝申し上げます。
第43回の本学会のテーマは「心地よい顔を求めて ―ラインを極める-」としました。心地よい顔とは、機能的・整容的に自身が心地良いと感じる主観的側面と、周囲が感じる客観的側面の2つの要素があります。患者立脚型評価は前者に、治療者である医師の評価は後者に相当し、いずれもが治療成果を評価する上で重要です。顔面外傷、先天異常、頭頸部再建、腫瘍、美容外科などの分野においても、 “心地よい顔を求める”という視点は普遍です。慈恵医大には“病気を診ずして病人を診よ“という学祖高木兼寛の言葉がありますが、患者の言葉に耳を傾ける患者立脚型評価は外科手術においても世界的潮流であり、本学会でも議論を深めたいところです。
さて先進国の中で睡眠時間が最も短いとされる日本人ですが、近年の健康志向から“睡眠”に関心が集まっています。昨年4月には厚労省では睡眠に関わる診療分野を標榜科とすることが厚労省で承認されました。頭蓋顎顔面外科領域においては顎外科手術や鼻中隔外鼻形成術などの手術が睡眠診療に該当しますが、機能外科・整容外科たる形成外科の大いなる出番が来たと言えるでしょう。我が国では耳鼻咽喉科を中心に閉塞性睡眠時無呼吸の治療が行われてきましたが、今後は頭蓋顎顔面外科医が参画し睡眠外科という新たな分野を確立する段階に来ています。このタイミングを逃さずに、当学会が社会貢献できる新たな一分野として睡眠外科を議論する場を用意しました。
特別講演ではレーシングドライバーの寺田陽次郎さんと、前厚労省医政局局長の浅沼一成先生にご講演をいただきます。海外招待講演は睡眠時無呼吸に対する上下顎前進術について台湾からChen-Hui Lin教授に、整容的な顎変形症手術と外鼻に対する配慮について香港からMike Yiu Yan Leung教授にご講演をお願いしています。
4つの教育講演では、睡眠外科を提唱する第一人者の太田総合病院睡眠センター長の千葉伸太郎先生に、鼻腔機能とアレルギーについて東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学講座の鴻信義教授にご講演いただきます。また下顎骨骨折治療を基礎から学べるよう大阪歯科大学口腔外科の竹信俊彦教授に、歯科矯正治療単独で顎変形症をどこまで治せるかについて神宮矯正歯科の斉宮康寛先生にご講演をお願いしております。
会員の皆様にとって有意義な会となるよう、医局員一同で準備を進めてまいりました。
多数のご参加を心よりお待ち申し上げております。
