このたび、2011年12月1日より「日本視野研究会」の活動を発展させ「日本視野学会」として活動することになりました。そして、その第1回学術集会の開催を担当することになり、大変名誉なことと嬉しく思っております。そして、この第1回学術集会は、今後の本学術集会のパイロットスタディの意味もあると捉えております。
近年、OCTをはじめとする眼の解剖学的な他覚的診断方法である「画像診断」の進歩は眼を見張るものがあります。「Structure and Function」といわれるように、「視野検査」は、「視機能の定量方法」として「画像診断」と表裏一体の関係にあり、今後、その技術の向上、学問の発展の重要性は大なるものがあります。これは、本学会の主要なテーマの一つです。
また、本学会のもう一つの大きなテーマは、「視野検査」の社会的意義の追及です。「視力」と比較して「視野」という考え方が広く認識されれば、緑内障を始めとする自覚症状のないまま進行してしまう疾患の早期発見につながると考えられます。また、日常生活の様々な場面での視野異常の評価を通して、様々な眼疾患の検診方法の確立も可能になるものと考えます。
こうした、さまざまな研究テーマにつき、本学会では、国際的な画像と視野研究組織であるIPS(Imaging and Perimetric Society)などとも協調し、国際的な活動も従来通りしていくつもりです。
本学術集会では午前中の一般講演は、時間が限られた中で、10数題の発表を予定しています。
お昼すぎの共催セミナーとして、Dr. Mike Patellaと、新家 眞東京大学名誉教授・関東中央病院院長にお話しいただける機会も得ました。各30分では申し訳ないのですが、密度の濃いお話を聞けるものと思います。
そして、午後のシンポジウムです。多治見市は、日本緑内障学会の疫学調査「多治見スタディ」の舞台でした。同調査で、潜在患者が多いという事実が判明しながら、12年を経過しようとした今、日本では眼科検診方法は依然として確立されていません。これらをふまえて、今回は、シンポジウムのテーマを「スクリーニング」としました。眼疾患は、どのように、どこまでを発見することを目的に、何を使って「スクリーニング」されるべきなのか?がテーマです。今後の日本の眼科検診方法の基礎になるような内容になることを願っております。
最後に、本学術集会のポスターに使った絵について、少し説明したいと思います。ポスターに表現しているのは、ご存じ「視野の島」です。この視野の島には、研究者が限りなく興味を引きよせられる「魅力的なキラキラ光る湖」の感度低下点があります。「どうしてそこに湖ができるのか?」「何が起こると感度低下するのか?」と興味は尽きません。視野の島のそれ以外のところは、生命力のある深い森で覆われています。この森は、「きれいなもの」「楽しいもの」を見ることができる様々な潜在能力・可能性を秘めた森ですが、木々の下では表から見たらわからない様々な変化が起こっている筈です。潜在能力も含めて、見えているはずのここにも興味は尽きません。この「視野の宝島」の上には、今後の「日本視野学会」の未来を祝って虹も出ています。こうした私のイメージをお話ししたら、こんな素敵な絵になりました。
大事な第1回目の学術集会なのに、学会を開催するには、少々不便な多治見市で開催させていただくことで、諸々の問題があろうかと思いますが、本学術集会が、参加者にとって有意義なものになるように、そして、第1回を基礎に今後の学会の大いなる発展をお祈りしてご挨拶とさせていただきます。
第1回日本視野学会学術集会
会長 岩瀬 愛子(たじみ岩瀬眼科院長)