ご挨拶
| 第202回日本胸部外科学会関東甲信越地方会 会長 順天堂大学医学部附属順天堂医院 呼吸器外科 主任教授 鈴木 健司 |
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関東甲信越地方会会長ご挨拶
この度,第202回日本胸部外科学会関東甲信越地方会を,2026年11月14日(土)に都市センターホテルにおいて開催させていただく運びとなりました.伝統ある本地方会を担当させていただきますことを,順天堂大学呼吸器外科学講座一同,大変光栄に存じております.また,本会の運営という大役をお任せいただきましたことに,心より御礼申し上げます.当講座としては初めての担当であり,これまで育てていただいた本学会に少しでも恩返しができればと考えております.
我が国の胸部外科学会は,戦後間もない昭和23年,初めて制定された「文化の日」にその歩みを開始いたしました.第1回総会において初代会長の大槻菊男先生は,「学会は明朗で真摯なものであるべきであり,研究成果を発表し忌憚なく議論し合うことこそが学術の進歩に資する」と述べています.さらに昭和34年には中山恒明会長が「学会は若い世代の教育の場でもある」と言及し,本学会の真骨頂である若手教育の軸が確立されました.この精神を受け継ぎ昭和40年に発足した本関東甲信越地方会は,現在では全国有数の規模を誇る地方会へと成長しております.
胸部外科30年誌において中山恒明先生は,「1942年までに発表された全世界の文献における胸部および腹部食道癌切除成績は151例中手術死亡144例,すなわち手術死亡率95.4%という極めて厳しいものであった」と記しています.これは当時の胸部外科全体に共通する過酷な現実であったと推察されます.しかし,先人たちのたゆまぬ努力と挑戦の積み重ねにより,現在では我が国の胸部外科医療は世界を牽引する水準に達しています.呼吸器外科領域におけるJCOG0802研究が前人未到の試験となり,世界の肺癌治療の標準を60年ぶりに塗り替えたことは,日本の技術と学術活動の結晶であり,本学会の果たしてきた役割の大きさを改めて認識するところです.
こうした偉大な歴史の地平の上に立つ一方で,私たちは今,デジタルテクノロジーの変革期に身を置いています.20世紀,キュリー夫人によるラジウムの発見から始まったX線診断,そしてハンスフィールドによるCTの開発は臨床を劇的に変えました.X線診断やCTの登場が臨床を大きく変革したように,ロボット手術やAIの発展は,外科医療の在り方をさらに変えつつあります.
とりわけ重要なのは,「情報と身体の関係性」の変化であると考えます.文献上,世界で初めて胸腔ドレナージを行ったのは古代ギリシャ時代のヒポクラテスであるとされます.その時代に体内臓器情報を得るには打診や声音振盪などが用いられていたと考えられます.このように,かつて診断に用いられる情報は身体と不可分のものであり,得られる量も限られていました.しかし画像診断の進歩により情報は爆発的に増加し,身体から切り離されてモニター上に提示されるようになりました.その結果,術者は得られた情報を再び身体に重ね合わせるという認知的作業を担うこととなりました.
現在,XR(拡張現実)やAIといった技術は,この「認知的翻訳」の負担を軽減し,情報を再び身体へと統合する可能性を有しています.これは外科医療の在り方を根本から変える重要な契機であり,私たちはまさに次の時代の転換点に立っていると言えるでしょう.
本地方会では,これまで培われてきた症例報告を中心とした伝統を大切に守りつつ,このような新たな潮流にも目を向け,AIやXRなどの先進的な取り組みに関する演題も広く募集いたします.本地方会が,会員の皆様にとって実践的な学びの場であるとともに,将来を担う若い先生方にとって新たな一歩となる機会となれば幸いに存じます.教室員一同,充実した会となるよう鋭意準備を進めてまいります.皆様の多数の演題ご応募とご参加を心よりお待ち申し上げております.






