ご挨拶
- 第10回日本HTLV-1学会学術集会
- 会長 内丸 薫
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 病態医療科学分野 教授
第10回日本HTLV-1学会学術集会を2024年11月8日(金)から10日(日)の3日間、東京一ツ橋の一橋講堂において開催いたします。日本HTLV-1学会学術集会は2008年から毎年開催されたHTLV-1研究会にその源流をさかのぼることができ、さらには2006年から2007年にかけて開催された「連続公開講座:HTLV-1と疾患」にまでそのルーツをたどることができるかもしれません。HTLV-1関連研究領域は、基礎医科学領域ではHTLV-1のウイルス学から関連疾患発症メカニズムの解明を目指した分子生物学、臨床医学においても血液内科学の成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)から、神経内科学のHTLV-1関連脊髄症(HAM)、眼科領域におけるHTLV-1ぶどう膜炎まで、またさらに関連が疑われる疾患の今後の解明など多岐にわたります。またHTLV-1キャリアおよび感染予防への対応には多職種が関与しますし、国の行政対応への働きかけの検討など幅広い領域の方々がこの領域には関わります。HTLV-1関連領域に関わる様々な人々が一堂に会して最新の知見を発表し、意見を交換することは極めて重要であり、2013年に一般社団法人日本HTLV-1学会の設立ともに、HTLV- 1研究会は日本HTLV-1学会学術集会へと発展しました。今回は記念すべき第10回学術集会にあたり、この節目の学術集会を会長として開催させていただくことを大変光栄に存じます。
この10年の本研究領域のあゆみを振り返ると、基礎研究においても臨床医学においても、またHTLV-1キャリア対応においても大きな進歩を遂げてきたと思います。基礎医科学においてはHTLV-1が感染細胞に引き起こす異常と、関連疾患発症にいたる病態解明が進み、それらの研究成果がATLの新薬の創薬につながり、HAMの治療にも新展開が期待されています。研究手法として次世代シークエンサーの普及に伴いbioinformaticsが本研究領域にも怒涛のように押し寄せ、膨大な知見が集積されつつあります。ATLに導入された新薬や造血細胞移植の新しい流れはATLの治療成績を向上させ、データベースの整備やaggressive ATL コンソーシアムの設立はATLの治療の進歩をさらに加速するものと期待されますし、HAMにおいてもロボットスーツHALの導入によるリハビリの改善、新規薬剤の開発のシーズも探索されつつあります。これらのどの領域においても次世代の若い研究者が参加してきており、次世代のHTLV-1研究を推進することが強く期待されます。そこで本学術集会はテーマを「HTLV-1研究―次世代へ」といたしました。10年の節目に立って、改めて現在の到達点と今後の展望について次世代と語る学術集会にしたいと考えております。コロナ禍から日常を取り戻しつつある今、本領域のさまざまな人々が直接つどい、HTLV-1研究のこれからを語りあえる学術集会になるよう、多くの皆様にご参加いただけますと幸いです。