ごあいさつ

この度、第4回日本HTLV-1学会学術集会を 平成29年8月18日(金)〜20日(日)の3日間、関西医科大学加多乃講堂にて開催させていただくことになりました。

ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)感染者は、わが国では約110万人、世界では1000-2000万人いるとされています。HTLV-1が関連する疾患には、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)に加え、慢性・進行性の神経疾患であるHTLV-1関連脊髄症(HAM)、目の炎症性疾患であるHTLV-1ぶどう膜炎等病態の異なった疾患が複数あります。これらHTLV-1関連疾患は日本で最初に報告され、その病態研究が精力的に行われて来ました。しかしながら、その発症メカニズムは完全には解明されておらず、根本治療も確立されていません。

以前よりHTLV-1研究者、臨床家、医療関係者や患者・HTLV-1キャリアが協力してHTLV-1対策に取り組んでまいりました。そして、これらの活動の一つとして平成20年5月に「HTLV-1研究会」を設立し、関連する研究成果の発表や情報交換を重ねてまいりました。

HTLV-1研究会は6回を重ねた後、平成25年11月1日に「一般社団法人 日本HTLV-1学会」と新たな発展を遂げることになり、第1回、2回の学術集会は、東京大学医科学研究所で、第3回学術集会は鹿児島県市町村自治会館にて開催されました。

これまでの学術集会では、発癌メカニズム、ワクチン開発、免疫などの基礎研究、HAMに関する臨床研究に加え、ATL患者実態調査、骨髄移植治療、ワクチン療法など、幅広い分野の研究成果が報告されました。第3回学術集会では、キャリアや患者に対するコメディカルのサポートについての公開シンポジウムも開催され、多くの医療関係者のみならず、患者・家族の参加も得られ、貴重な情報交換が行われました。

平成22年末に政府は「HTLV-1総合対策」を策定し、国を挙げてHTLV-1対策に取り組む方針がとられました。これにより、政府が感染予防対策(妊婦の抗体スクリーニング)、相談支援(カウンセリング)、医療体制の整備、普及啓発・情報提供、研究開発の推進に取り組む事となり、成果が徐々に現れてきております。しかしながら、HTLV-1感染とその関連疾患の領域では、公衆衛生、疫学、臨床および基礎研究のいずれにおきましても、まだまだ多くの解決すべき課題が残されております。そして、社会的な注目度が高まり、行政側の対応も大きく変化して来たこの機会に、研究を更に発展させて、感染の予防と疾患の発症予防・治療に繋げることが期待されています。そのためには、基礎研究者と臨床家の情報共有と新規治療法の開発のための協力が必要です。

このような観点からHTLV-1に取り組む研究者と臨床家が一同に参加する本学会の果たす役割は非常に大きいものです。

第4回学術集会は、「HTLV-1関連疾患の発症予防に向けた挑戦」というテーマのもと、大阪にて開催いたします。関西地区は九州地区に次いで2番目に多く(約20%)の感染者の方々が居住する地域であり、ATL発見の地でもあります。多くの研究者や臨床医にHTLV-1の基礎研究から臨床応用への導入について、治療の進歩に繋がる研究発表と討論をしていただくことで、その研究成果を研究者・臨床医だけでなく、医療関係者や患者・家族の皆さんにも広く情報共有できる学術会議になることをめざし準備を進めております。

つきましては、関係各位におかれましては、第4回日本HTLV-1学会学術集会に積極的にご参加頂き、研究成果の発表と情報交換の場として有意義な時間を過ごされますことをお願い申し上げます。

第4回日本HTLV-1学会学術集会
会長 藤澤順一

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