わが国では、昨今、「がん対策推進基本計画」における第4期の基本計画(2023年度から2028年度までの6年を目安として実行)が発表されています。これにおいて、「療養生活の質の維持・向上の観点から、食事を通して栄養を摂取することや、治療の合併症予防及びその病状軽減は重要であり、がん患者に対する口腔の管理に、歯科医師や歯科衛生士等の口腔ケアチームと連携しつつ対応することが求められている」こと、そして、取り組むべき施策として、「がん診療連携拠点病院(岡山県においては岡山大学病院等の7病院)等は、多職種連携を更に推進する観点から、拠点病院等におけるチーム医療の提供体制の整備を進めるとともに、都道府県がん診療連携協議会において地域の医療機関と議論を行い、拠点病院等と地域の医療機関との連携体制の整備に取り組む。」ことが明記されています。
一方、団塊の世代が75 歳以上となる 2025 年を展望し、「効率的かつ質の高い医療提供体制の構築」と「地域包括ケアシステムの構築」が急務の課題であり、2014年度から消費税増収分等を活用した地域医療介護総合確保基金が創設されています。各都道府県は基金を造成し、各都道府県において策定した計画に基づき事業を実施しています。
この度、岡山大学病院医療支援歯科治療部は、2023年度から3カ年の予定で、岡山県から「がん患者を対象とした地域歯科保健医療の実態調査及び基盤整備」事業の委託を受け、実施させていただくことになりました。
がんになっても自分らしく生きることができるよう、がんの支持療法の一環として、生活の質に直結する口腔の管理(がん口腔支持療法)は極めて重要であり、全国で推進されています。地域医療支援病院やがん診療連携拠点病院等の患者に対する歯科保健医療の推進にあたっては、地域の歯科診療所との連携が必要です。一方で、岡山県の歯科医療機関における、がん口腔支持療法を目的としたがん患者の受入状況について、診療報酬ベースのデータでしばしば論じられますが、不明点が多いのが実情です。また、受入可能な歯科医療機関が県民にわかりにくい状況にあります。
本事業では、岡山県の歯科医療機関のがん口腔支持療法を目的とした患者の受入状況を明らかにするとともに、がん口腔支持療法を受けることができる歯科医療機関に関する情報を県民が知ることができ、そしてアクセスできる体制の基盤整備を行います。
事業責任者
岡山大学病院 医療支援歯科治療部
准教授 曽我 賢彦