P-5 2 動物病院間における治療経歴別の犬と飼い主、動物病院内環境からのブドウ球菌属の分離 |
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○兼島 孝1,2)、小宮智義3)、花木秀明4) |
1)みずほ台動物病院、2)琉球動物医療センター、3)北里研究所 生物製剤研究所
4)北里大学 抗感染症薬研究センター |
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【目的】 |
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ブドウ球菌属は、動物やヒトの皮膚や粘膜の常在性細菌で、抗菌薬の使用で薬剤耐性化が問題となっている。ヒト医療現場においては、特にMRSA
に関する事例が多く報告され、その対処方法について議論されている。しかし、小動物医療現場においては、その検討は多くなく、未知の部分も多い。本研究では、2
動物病院間において治療経歴別に、犬と飼い主、動物病院内環境のブドウ球菌属の状況を明らかにすることを目的に調査を行った。 |
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【材料と方法】 |
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2008 年7 月から12 月までに飼い主と犬のブドウ球菌の分離を2 動物病院で試みた。治療歴が無い犬50
例とその飼い主50 例、採材前に抗菌薬の治療を1 週間以上行っている犬50 例とその飼い主50
例、採材前に抗菌薬とステロイド薬の治療を1 週間以上行っている犬50 例とその飼い主50例、施設内の環境検査として、院内スタッフと犬舎やドアノブなどから50
例をそれぞれの施設で採材した。採材後、マンニット食塩培地に塗抹後、北里大学抗感染症薬研究センターへ送付し、ブドウ球菌属の分離およびfemA
遺伝子、mecA 遺伝子をターゲットとしたPCR による検出を試みた。さらに、SCCmec
遺伝子によるTyping を行った。 |
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【結果と考察】 |
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動物病院A と動物病院B において検出率に差が出た。治療歴が無い犬よりも、薬剤投与犬の方がmecA
の検出率が高かった。SCCmec type はIV 型が比較的多く検出された。一般的にヒトでのS.
intermedius の検出率は0.1%程度であるが、飼い主では、7‐16%と高率に検出された。 |
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ヒト医療施設において、薬剤耐性菌による病院内環境汚染は、人的要因によるところが多いと報告されている。すなわち、感染症専門医、Infection Control Doctor(ICD)、Infection Control Nurse(ICN)、Infection Control Team(ICT)の存在意義が大きく病院環境汚染の制御に役立っている。 |
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そのような要因の無い小動物領域において、動物病院A ではICD 獣医師と動物看護職協会の感染制御委員の動物看護師が感染制御に指導にあたっている。施設間に有意な差が出たのは、このような人的要因によるところも大きいと推察された。今後、施設数を増やすこと、動物病院B
に感染制御のノウハウを伝えた後に再度、検査を行うことを実施するとともに、犬と飼い主から分離された菌についての性状解析を進めて行く予定である。 |
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