1 人獣共通感染症(包虫症)の地球規模での発生と予防・治療対策 −WHO作業部会の活動から |
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○藤倉 孝夫 |
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元 世界保健機関(WHO)上席獣医公衆衛生管理官 |
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Echinococcosis(包虫症)は最も重要な寄生虫性人獣共通感染症の一つである。WHOは1948年の創始以来,該疾患の制圧を期して活動してきた。1985年作業部会を組織し,スイス国Zurich大学寄生虫病研究所にWHO
Collaborating Centre for Echinococcosis Research and Controlを設置し,日本,を含む世界23カ国の専門家を委嘱した。本報告では作業部会専門家による調査・研究活動の成果から得られた知見を中心に述べる。 |
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【結果・考察】 |
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病原体の諸性状ならびに感染の伝播: Echinococcus granulosus (単包条虫)、E.multilocularis(多包条虫)による感染を被り人や家畜は単包虫症,もしくは多包虫症に罹患する。包条虫はイヌ科動物を終宿主として,地球規模で分布している。ヒトや家畜などの動物集団は感染して中間宿主となり,慢性期には重篤な症状を呈する。その分布は北極圏から南半球最南端に至る。 |
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地球規模での分布 中国と日本: 欧米諸国をはじめ中国や日本でも包虫症対策が長年にわたり続けられてきた。とくに中国北西部では包条虫の常在、包虫症の流行が顕著である。青海省では終宿主のイヌの単包虫保有率は82.5%,中間宿主の牛では100%であるとの記録もある。新彊自治区では6-15歳までの学校児童の開腹手術による包虫症治療を受けた割合がほかの年齢層に比べて高かった。日本では、北海道で1937年包虫症が礼文島,釧路・根室地方で認められて以来,1989年には礼文島の流行は終息したものの,その後も年間平均6.1人の発生が記録されている。この間,715,000人を対象とした集団検診など予防対策に要した経費は425万USドル,患者60人の治療に要した医療費は573万USドル(K.SUZUKU & N.SATO)であった。 |
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予防・治療対策:包虫症に対しては治療薬やワクチンは未だ開発されておらず,終宿主に有効な駆虫薬(プラジカンテル)を用いてイヌやキツネ集団の駆虫を行い感染源を根気よく制圧するのが実施可能な対策である。ベイト方式による自然界のキツネの駆虫対策に成功している(ドイツ南部,北海道)。キツネなどの終宿主をヒトの生活圏に近付けない,包条虫卵に汚染されている場所へは立ち入らないこと,また,常在地では定期的な健康診断,早期治療が緊要である。 |
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