2 Q熱コクシエラ抗体スクリーニング検査法の改良 |
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○蔡 燕 1)、野村彩朱 1)、矢野竹男 1)、中尾義喜 1)、今井俊介 2)、福士秀人
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1)オリエンタル酵母工業株式会社
2)奈良県保健環境研究センター
3)岐阜大学応用生物科学部 |
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【目的】 |
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Q熱はCoxiella burnetiiを原因菌とする人獣共通感染症である。感染症法の第4類指定疾患である。本症は、臨床所見に乏しく、他の熱性呼吸器疾患や慢性疲労性疾患などとの鑑別が困難である反面、早期に適切な治療を行えば治癒率が高いことから、的確で簡便なスクリーニング検査方法の確立が望まれている。今回我々は、コクシエラ感染細胞を固相化したスライドグラスを用いて、検体希釈液の改良により非特異反応を抑えた間接蛍光抗体法による抗コクシエラ抗体検査法を確立したので報告する。 |
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【方法】 |
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C. burnetii II 相菌を感染させたVero細胞と非感染Vero細胞を等量混合し、スライドグラス上で一晩培養後、アセトンで固定した。被検血清としてQ熱が疑われる患者血清を含む21検体を用いた。検体血清を16倍から2倍希釈し、スライド上の細胞と反応させ、FITC標識した抗ヒトIgGおよびIgMで検体中の抗コクシエラ抗体を検出した。検体希釈液としてPBSに非特異反応除去剤を混合したものを用いた。蛍光顕微鏡で観察し、染色パターンと検体希釈倍数で判定した。検体希釈倍数において、IgGは256倍以上陽性、IigMは128倍以上陽性とした。 |
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【結果】 |
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通常の塩類溶液を希釈液とした場合、多くの検体に非特異的な反応がみられたが、非特異反応除去剤を混合した溶液を希釈液とすることによりほぼ完全に非特異反応を除去することができた。蛍光染色像には2種類が観察された。すなわち細胞内黄緑色の封入体及び細胞外散在の黄緑色の粒子が観察される蛍光像および細胞内黄緑色の封入体のみが染色された蛍光像であった。患者血清はいずれも前者の蛍光像であったことから、前者の蛍光像のみをコクシエラ抗体陽性と見なした。この方法を用い、2005年6月からOYC長浜LSLでQ熱抗体測定の受託検査を開始し、2006年5月まで304検体を測定したところ、陽性1検体(IgG)が検出された。 |
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【考察】 |
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血清中の抗コクシエラ抗体は抗体価が低いため検体希釈を低倍率で実施しなければならない。そのため非特異反応が多く、判定が非常に困難である。今回我々は、改良した検体希釈液を用いることで非特異反応を除去するための検体前処理を必要としない、抗コクシエラ抗体測定法の改良に成功した。この方法は簡便で、的確な結果が得られることから抗コクシエラ抗体検出のためのスクリーニング検査に有効である。 |
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