
横浜市立大学医学部 形成外科学講座 主任教授 林 礼人
このたび、第49回日本顔面神経学会を、令和8年6月18日(木)・19日(金)の2日間、神奈川県横浜市の横浜市開港記念会館にて開催いたします。顔面神経麻痺に対する再建術に真摯に取り組んできた私にとりまして誠に光栄な機会であり、この機会をお与えくださいました本学会の役員ならびに会員の皆さまに、心よりお礼申し上げます。
横浜は、日本が世界に向けて扉を開いた「近代日本の玄関口」として、その歩みと発展を大きく支えてきました。開港の地として新たな文化・技術・学問を果敢に受け入れる挑戦と共創の精神は、今も街の空気に息づいております。開港50周年を記念して建てられた横浜市開港記念会館は、その象徴として長い年月を刻んでまいりました。
顔面神経麻痺の診療においては、AI 技術を取り入れた新たな評価ツールの開発や、不完全治癒例・病的共同運動(synkinesis)など後遺症に対する外科的治療など、最前線の取り組みが今なお着実に進んでおります。形態のみならず心からの自然な笑顔の回復を目指し、本学問は次のステージへと歩を進めています。
こうした背景を踏まえ、今回のテーマを「心からの笑顔を 開かれた未来に」といたしました。笑顔は人の社会生活や尊厳に大きな影響を与え、SNS 全盛の現代においてその重要性はいっそう高まっています。顔面神経麻痺の診療は、表情筋と神経の複雑な構造も相まって、いまだ解決しきれない様々な病態や課題が残されていますが、自然な笑い(spontaneous smile)の実現へ向けた探究こそが、心からの笑顔へ通じる鍵だと考えます。また「開かれた」という言葉には、新しい学問や技術のみならず、多様な分野や地域から新たな人材を広く受け入れることにも繋げられたらという思いを込めました。
本学会では、例年韓国からいらして下さるHak Chang先生、Tae Suk Oh先生、Yang-Sun Cho先生、Jin Kim先生らに加え、アメリカから UT Southwestern 大学教授のShai Rozen 先生、フランスからDaniel Labbé 先生、台湾から Chang Gung Memorial Hospital の Johnny Lu 先生らをお招きし、毎年開催されてきた日韓シンポジウムを国際シンポジウムへと発展させ、世界に開かれた新たなセッションを構築したいと考えております。また、本学会は耳鼻咽喉科、形成外科、脳神経外科、リハビリテーション科、麻酔科など多様な診療科が学際的に集う場でもあります。各分野の術式・手技のノウハウをショート動画で共有し、分かりやすくオープンな形で知見を深める機会も提供したいと考えております。さらに、より多くの医療者が顔面神経麻痺診療に参画できるよう、リハビリテーション等にご尽力くださるコメディカルの皆さまが主体的に活躍いただけるセッションも検討いたします。
なお、本学会は、秋田大学耳鼻咽喉科 主任教授・山田武千代 先生が主催される第35回日本聴神経腫瘍研究会との合同開催です。両学会の会員に広く開かれた相互交流の機会を創出できればと願っております。
会場は交通至便で、横浜港や中華街にもほど近い立地です。学会の合間には、ご家族やご友人とともに、思い出に残るひとときをお過ごしいただければ幸いです。
心からの笑顔の未来に向けて、皆さまのご参加を心よりお待ち申し上げております。
2025年11月吉日

