ごあいさつ
プリオン病はヒトからヒトへ、動物からヒトへ伝播し得る急速進行性で致死的な脳疾患です。プリオン病の治療法開発は非常に難しくありますが重要な課題でもあります。国立研究開発法人日本医療研究開発機構 戦略推進部 難病研究課(AMED)平成30年度 難治性疾患実用化研究事業・診療に直結するエビデンス創出研究で採択されました「プリオン病の早期診断基準の作成を目指した新たなエビデンス創出とその検証に用いる遺伝性プリオン病未発症例の臨床調査と画像・生体材料の収集」の研究代表者を務めております。
当研究班では「プリオン病の早期診断基準の作成を目指した新たなエビデンス創出」と「遺伝性プリオン病未発症例の臨床調査と画像・生体材料の収集」を主体として研究を行っています。
プリオン病はCreutzfeldt-Jakob病(CJD)およびその類縁疾患は人獣共通感染症、遺伝性中枢神経変性疾患などの多面的な特徴を有する疾患群として総称されています。プリオン病の経過は数か月から数年と亜型によって異なるものの、一度発症すると治療法がない疾患です。現在までにプリオン病の治療候補薬が複数発見され動物モデルでは有意な延命効果を示していましたが、ヒトでは明らかな有効性を示していません。古典的プリオン病では発症から3ヶ月程度で急速に悪化し無動無言に至るため、今後革新的な治療法が確立したとしても、ある程度の効果を期待するためには、発症後超早期での迅速な診断が必要不可欠となります。また、現在効果が示唆されている予防薬(既存薬であるFK506)を超早期から投与することによる十分な効果も期待されています。つまり、現在有効な治療法がない中で、予防法での対応が唯一の対処法と考えられ、そのためには早期診断法の確立が必須であります。さらにここ3年間でリポジショニング治験(既存薬であるFK506)の推進を考えており、早期診断基準の確立が求められています。そのため「プリオン病の早期診断・早期治療」を実現するにプリオン病診断基準を改訂しなくてはならない。さらに現行の診断基準は臨床症状だけで、髄液及び画像などのバイオマーカーは入っていません。本研究では、髄液及び画像などのバイオマーカーを基軸とし現行の診断基準の有効性の検証を行い、さらに現行の診断基準の改訂を行なうことができると考えております。
厚生労働省「プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班」、「プリオン病サーベイランスと感染予防に関する調査研究班」、JACOP、日本医療研究開発機構(AMED)のプリオン関係班等の関連組織と連携しながら、プリオン病の疫学・臨床病態の解明、診断・治療法の向上、感染予防対策等のプリオン病克服のための調査研究やガイドライン作成等の事業を進めてまいります。今後ともよろしくご指導、ご支援をお願い申し上げます。
2020(令和2)年12月
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(難治性疾患政策研究事業)
プリオン病の早期診断基準の作成を目指した新たなエビデンス創出とその検証に用いる遺伝性プリオン病未発症例の臨床調査と画像・生体材料の収集
研究代表者 佐藤 克也