多細胞構築研究室

 

C. elegansの細胞のほとんどは前後方向に非対称に分裂し、異なる運命を持った細胞を作ります。そして、そのほとんどがWnt/βカテニン非対称経路というシグナル経路によって制御されています。

この制御において、βカテニンなどのWntシグナル伝達因子が細胞内に非対称に局在していることを私たちは発見しました。

非対称分裂機構

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分裂終期でのシグナル因子の非対称な局在

分裂終期でのWRM-1/βカテニン::GFPのライブ画像

 例えば、βカテニンは分裂中、細胞前方の表層に局在し、終期に新しい核が形成されると、後方の核に局在するようになります。

 私たちは最近、Wnt経路の制御により紡錘体が非対称に形成され、その働きによってβカテニンが非対称に核局在することを明らかにしています。

細胞工学の総説参照(公開中)

Wntシグナル伝達経路は、生物の発生の様々な過程で重要な働きをしており、癌などの疾患にも関与しています。また様々な幹細胞の自己複製分裂にも関与していることが知られています。


最近、マウスのES細胞にWntを含んだビーズを付着させると、線虫で観察されたようにβカテニンが非対称に局在し、娘細胞の運命が非対称になることが示されました。(Habib et al. 2013)非対称分裂機構がマウスと線虫で保存されていると考えられます。


私たちは線虫の非対称分裂機構を解明することで、癌などの理解や幹細胞による再生医療にも貢献できると考え、さらに研究していきます。