⽇本緩和医療学会第8回九州⽀部学術⼤会
⼤会⻑ 永⼭ 淳
国家公務員共済組合連合会浜の町病院 緩和医療内科
このたび、2026年9⽉5⽇にアクロス福岡にて開催される⽇本緩和医療学会第8回九州⽀部学術⼤会におきまして、⼤会⻑を拝命いたしました。微⼒ではございますが、本⼤会の意義を深く受け⽌め、全⼒を尽くす所存です。
本⼤会では、「緩和ケア3.0 ― 緩和ケアの基盤を見つめ直すーそして未来へ」をテーマに掲げ、制度整備や普及を経た今だからこそ、緩和ケアの原点に⽴ち返り、そのあり⽅を多⾯的に問い直す機会としたいと考えております。
⽇本緩和医療学会は1996年の設⽴以来、がんやその他の⽣命を脅かす病に向き合う患者さんと、その周囲の⼤切な⼈たちの⽣活の質(QOL)向上をめざし、学術研究・教育・啓発に取り組んでまいりました。30 年近くにわたる取り組みにより、緩和ケアは医療・介護の現場において重要な役割を果たす存在として広く認識されるようになってきたと感じております。
国内での緩和ケアの歴史を振り返ると、1981年に聖隷三⽅原病院に緩和ケア病棟が開設されたのを⽪切りに、1980〜90年代に全国でホスピス・緩和ケア病棟の開設が相次ぎ、1990年に「緩和ケア病棟⼊院料」が診療報酬に加えられたことでその流れは加速しました。がんのエンド・オブ・ライフケアとしての認知が進んだこの時期をフェーズ1.0とすると、2000年代以降、がん対策基本法(2006年制定)、がん対策推進基本計画(2007年より5年毎に改定)の後押しもあって、緩和ケアはがん治療と並⾏して提供されるものになりました。2008年からは、がんなどの診療に携わる医師やその他の職種を対象とする緩和ケア研修会が全国規模で開催されるようになり、基本的緩和ケアの普及に繋がりました。⽇本緩和医療学会も委託事業「PEACEプロジェクト」として、この研修プログラムの作成・改訂を担うことで貢献してきました。この時期は緩和ケアのフェーズ2.0と⾔えます。
しかしながら、緩和ケアを必要とするすべての⽅に適切な時期に⼗分なケアが届けられているかというと、依然として課題が残されています。病気や時期にかかわらず、緩和ケアのニーズに応じて、適切な緩和ケアが当たり前のように届けられる、社会を実現しなければなりません。今回の「緩和ケア3.0」というテーマには、そうした基盤の再確認と再構築を進め、緩和ケアが当たり前のサービスとして存在する新しいフェーズへの思いが込められています。
そして、質の⾼い緩和ケアがいつでも、どこでも、どんな病気でも届けられるためには、実践の現場を⽀える知識と技術の継続的な研鑽、多職種の対話と連携が⽋かせません。さらに、緩和ケア専⾨職が、⽇々変化しうる曖昧で複雑な状況に的確に向き合うためには、職業倫理や実践の背後にある哲学的基盤を深く理解していくこともまた重要です。
本⼤会では、緩和ケアにおける中⼼的な課題である「がん疼痛の薬物療法」をひとつ⽬の柱とし、臨床の第⼀線で活躍されている専⾨職による最新の知⾒と実践の報告を共有いたします。加えて「意思決定⽀援」や「治療とケアのゴールを話し合うコミュニケーション」について学ぶ場を⽤意します。さらには緩和ケアの根幹を成す「相互扶助」「利他と贈与」「ケアの倫理」といったテーマについての理解を深め、緩和ケアの多層的な再定義を⽬指します。
私をはじめ⼤会関係者⼀同、全⼒を挙げて本⼤会の準備に取り組んでおります。本⼤会が、緩和ケアに関わるすべての⼈々にとって有益な学びと出会いの場となるべく、皆様の温かいご⽀援とご協⼒を賜りますよう⼼よりお願い申し上げます。